文部科学省の誤りを経済財政諮問会議が正す

先日、「地方大学の衰退は市場の失敗か?」という記事を書いた。記事の最後で、大学の新増設が首都圏に一極集中してきたのは市場の失敗ではなく、文部科学省という行政の失敗であると指摘した。

4月25日の経済財政諮問会議では大学改革が議題に上がり、地方大学の振興と東京23区内での大学新増設の抑制について、民間委員からの資料を基に議論が進められた議事録も公表された

経済財政諮問会議の模様を伝える産経新聞の記事は興味深い。記事には次のような記述がある。

政府は同日、首相の指示を受け、人材投資のあり方を話し合う閣僚級の「政策会議」新設に向けた具体的な制度整備に着手した。議論の取りまとめ役を担う閣僚ポストを新設する案も浮上している。

文部科学省に大学改革を委ねるのではなく、新たに設置される政策会議の担当大臣が主導する、と記事はいう。これは、文部科学省による今までの大学新増設の許認可は間違いだったと、経済財政諮問会議が認識したからこそのアクションである。会議後の記者会見では石原担当大臣が「今日の議論は、大学改革を巡っては、ざっくりした、具体的な話ではなくて、キックオフという形で引き取らせていただきました。」と語っている。議事録にも「キックオフ」という表現はあるが流れはできた。文部科学省は巻き返そうとするだろうが、勝負はついたようだ。

民間委員の資料には、「大学改革」のほかに、「高等教育へのアクセスの機会均等」と「教育の質の向上」に関する提案がある。なかでも、社会人に新たな知識とスキルを与えるリカレント教育を地元の自治体や企業と連携して進めるという提言は、地方大学の振興に直接関係するよい提案である。4月27日に開いた公開シンポジウムでも、デジタルで経済社会が急激に変革する中では、社会人のリカレント教育は必須であるという結論になった。