【映画評】猫忍

渡 まち子

時は泰平。霧生家の若手忍者・久世陽炎太は、ある日、忍び込んだ屋敷で、ふっくらとした茶白の猫と遭遇する。その猫は、幼い頃に生き別れた父の剣山と同じ赤鼻だった。秘伝“変化の術”によって父は猫に化けたと確信した陽炎太は、父を人間に戻すため抜忍となり、父(猫)を連れて秘伝の巻物を探す旅に出る。しかし陽炎太を追う、霧生忍者の追手が迫っていて…。

父の面影を宿す猫と旅をする孤独な忍者の活躍を描くエンタメ時代劇「猫忍」。猫と時代劇という異色の組み合わせでスマッシュヒットとなった「猫侍」の製作チームによる、新たな癒し系猫型プロジェクトだ。空前の猫ブームの中、今回、猫の“父上”を演じるのは堂々とした体格の茶白猫の金時くん。陽炎太と共に旅をしながら。時に癒し、時に戦い、時に思慮深い表情をみせる名優ぶりだ。幼い頃に生き別れた父を探すこじらせ忍者と、おやじ系ツンデレ猫の組み合わせは、見ているだけで微笑ましい。さらに陽炎太と父上を狙う追手たちも、気がつけば猫の父上に癒されている。他に三毛猫の“まごころ”も登場し、猫好きの心をどこまでもくすぐる内容だ。ストーリーは他愛ないものだが、変化の術にも通じる、人はいつでも変わることができるという、案外真面目なメッセージがしれっと込められている。日光江戸村の全面協力で実現した、忍者アクションにも注目してほしい。自他ともに認める大の猫好きの私としては、問答無用で本作を応援することに決めている。
【50点】
(原題「猫忍」)
(日本/監督/大野拓朗、佐藤江梨子、船越英一郎、他)
(猫好き必見度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年5月24日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式ウェブサイトから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。