知財本部・映画振興会議「はじめに」

知財本部・映画振興会議。これも座長を務めました。
東宝、東映、松竹、角川、吉本興業、フジテレビ、講談社などの社長・会長がずらり並ぶ重たい会議でしたが、何とかとりまとめにたどりつきました。

しかし大きな問いは「今なぜ映画を語るのか」でした。それを報告書冒頭に記しました。ポイントを挙げます。

アニメ・マンガ、映画、音楽、ゲーム、放送番組等のコンテンツはクールジャパンを代表する要素・・。このうち、我が国の映画産業は約 2,000 億円の市場規模を有しており、長らくアメリカに次ぐ世界第二位の市場として、世界マーケットの中でもその存在感を示してきた。

近年、台頭する中国市場にその地位を明け渡すこととなったが、昨年、2016 年には、過去最高の 2,355 億円の興行収入を記録し、また、映画館へ の入場者数が、42 年ぶりに1 億 8,000 万人台を回復するなど、改めて映画の持つ力に注目を集めることとなった。

昨今、インターネットを活用した動画配信サービスの登場等により、これまで映画ビジネスを支えていたビデオソフトの売上げが減少傾向にある一方で、動画配信サービスの隆盛など、資金回収の手段たるメディアを巡る状況が大きく変化を遂げつつある。

我が国人口の減少に伴い、国内市場そのものが縮小していくことが懸念されている。これらの変化に対し、魅力的な作品作りを維持・強化していくことにより、国内の市場を更に拡大していくとともに、海外展開を抜本的に強化し、資金回収 の基盤となるマーケットの維持・拡大を図っていく必要がある。

古くは、ハリウッド映画の世界への発信に伴い、ジーンズや家電といった米国のライフスタイルが世界中に浸透していったことに象徴されるように、映画は、その国のイメージ、ライフスタイルを海外市場において浸透させる力を持つ。

近年、政府は、「クールジャパン戦略」を推進し、 アニメ・マンガ等のコンテンツを含むクールの海外への商品・サービス展開、そしてこれを通じてインバウンドの国内消費に結びつけること等により、世界の成長を取り込むべく、官民一体となった取組を行っている。

映画は、原作(小説・漫画等)・音楽・映像・アニメといった要素を含む総合芸術であり、それが故に、各分野への波及効果も大きい。映画は・・海外市場における先導役としての期待が大きく、映画が浸透していく事に伴って、財・サービスの輸出やインバウンド需要の拡大という拡がりが期待される。

大ヒットとなった「君の名は。」は、国内でも聖地巡礼といっ た動きをもたらし話題となったが、同様に、中国、韓国といった諸外国でも、日本映画の過去の興行成績を更新する等大きなブームを巻き起こしている。・・日本という国のイメージを変え、日本の存在感を示す力を有していると言えよう。

オリンピック・パラリンピックは、スポーツの祭典であるとともに、文化の祭典でもある。これを契機とし、映画を我が国が誇る総合芸術として世界に発信し、そして成長産業として更なる飛躍のステージに引き上げて行くことは、・・極めて重要な要素となる。

知的財産戦略本部では、上記の認識に基づき、検証・評価・企画委員会の下に、「映画の振興施策に関するタスクフォース」を設置し、集中的な議論を行った。「知的財産推進計画 2017」に反映させることによって、政府の施策を力強く 前進させることが期待される。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。