こんにちは。香川健介です。アゴラでは財政や社会保障関係の連載をしています。
前回の記事「日本政府に膨大な借金を作らせた最大の原因はこれです」では、日本の巨額の財政赤字は、高齢化に伴い、特に医療費を中心とする社会保障給付が膨れ上がっていることが最大の原因であるということを説明しました。
この傾向はそう簡単に変わりそうもありません。日本の財政の将来に不安を抱く人が増えるのも当然でしょう。
政府で働く人のなかにも、真剣に心配している人がたくさんいます。
では、この現状に対し、政府はなにをすればいいのでしょうか?
以下、私の個人的な考えを書いてみます。
政府が最重要でやるべきなのは少子化対策
財政・社会保障まわりで政府がすべきことは山ほどある中で、私は、少子化対策こそ政府がやるべき最優先事項だと考えています。
医療制度改革や消費税増税などを推す人が多いのかもしれませんが、私は、これら全ての問題の根底にある少子化問題の根本的解決を、優先順位の筆頭にすべきだと思っています。
直近の統計を見ると、日本の年間出生数は100万人を割り込みました。
人口統計を見ると、1970年台前半の200万人をピークに、日本の年間出生数は下がり続けています。また、人口に占める子供の割合も減り続けています。
その反面、前々回の記事で書いたとおり、日本の人口に占める高齢者の割合は増え続けています。
出生数が死亡者数を下回り、日本の人口も減少し始めました。
このような状況が続くと、社会保障や財政や経済はどうなるでしょうか?
言うまでもなく、子供が少なくなると、保険料の払い手が減るので、社会保障問題は悪化します。
当然、財政の持続可能性も怪しくなります。高齢者が増えている現状だと、なおさらです。
また、人口が減少するので需要も減り、デフレ圧力も強まります。
人口減でも経済成長できるという意見もあり、それはある面では正しいのですが、それでも人口が減るより増えたほうが経済に良いことは間違いありません。
結局、少子化で子供が少なくなると、問題ばかり起きます。
企業も投資に及び腰になります。
人口がこのまま減り続けた場合、究極的には、日本という国家そのものの存続が危うくなっていきます。
これらのことは、この記事を読んでいる方も、理屈のみならず、感覚的にも理解できるでしょう。
少子化は万病のもとです。
経済に詳しい私の友人は以前、「経済成長は万病を治す」と言ってました。
同じ万病という言葉を使うなら、少子化は国を滅ぼす万病の原因だと言えます。
もし少子化問題が改善されれば、このような暗い未来は明るくなります。
未来を作るのは子供です。
子供の数が増えれば人口が増え、需要が生まれます。若い世代の将来不安が減るので、明るい気持ちになり、お金を使うようになります。
経済はよくなるし、年金・医療・介護などの社会保障の原資を払う人も増えます。
高齢者がちょっと増えても、子供がそれ以上に増えるのであれば、高齢者向けの負担をカバーできるだけの余裕が生まれるのです。
少子化問題の解決は、経済にも財政にも社会保障にもプラスになります。
良い循環が生まれます。
もちろん、これだけ少子高齢化と財政難が進み、団塊ジュニア世代が40代に入り出産適齢期が過ぎてしまった以上、ここから少子化対策を一生懸命やったところで、なかなか子供は増えにくいでしょう。
また、子供が大人になるまでには20年かかるので、すぐには効果は出ません。
ただ、何もやらないと、将来ほぼ間違いなく最悪な事態になります。
長い戦いになりますが、今から頑張って対策する必要があります。
貴重なお時間を割いて本記事を読んでいただき、どうもありがとうございました。
本記事について面白いと思った方は、よろしければ私のTwitterやFacebookなどをフォローしていただいたり、何か話しかけていただけましたら嬉しいです。
私自身は、「財政や社会保障の歪みを何とかし、子育て世帯に対するサポートを手厚くする世の中を作りたいな」と思っています。
似たような考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にお声がけください。私もいろんな方とお話ししてみたいと思っています。
あと、先日、本を出版しました。
主に、財政や社会保障の話や、財政破綻が起きる場合のメカニズムや、「個々人が財政破綻にどう対処したらいいか?」などの解説をしています。
タイトルは、「マネー本っぽくしたほうが、手にとってもらいやすいのでは?」と私が勘違いしたせいで微妙なものになってしまいましたが、内容はまじめなものになっています。
読んだ方からも、「タイトルのせいで人に紹介しづらいが、すごく面白かった」「とてもわかりやすく、勉強になった」などの感想を多数いただいています。
本記事を読んで面白いと思った方は、本のほうも楽しめると思いますので、よかったら、ぜひ読んでいただけましたら幸いです。
なお、本記事を書く際、友人のOさんに原稿を見ていただき、非常に有益なアドバイスを多数いただきました。大変助かりました。
Oさん、いつも本当にありがとうございます。