立ち食い寿司業界、ちょっと姑息すぎないか!?

渡辺 龍太

東京へ観光で遊びに来た外国人の友人から、日本の寿司店での会計が意味不明でショックを受けたという話を聞きました。その友人が行った寿司店は、立ち食い寿司のチェーン店だったそうです。そこのメニューには、必ず「寿司◯◯円~」と安さを売りにする感じの数字が大きく書いてあり、横に「1カンの値段」と割りと小さめに書いてあります。

そして、寿司を頼むと必ず、2カンで提供されるというシステムが、注意深く見ないと分からない感じで書いてあります。つまり、この店で300円と書かれているメニューを頼むと、必ず2カン出てくるので600円のオーダーとなるのです。

一方、日本の一般的な回転寿司に行くと、1皿に2カンの寿司が乗っていて、メニューには2カン(1皿)の値段が表記されていますよね。だから、私の友人は、立ち食い寿司点のシステムも、回転寿司と同じだろうと思ってしまったのです。そのため、立ち食い寿司でたらふく食べて会計となった時、想定していたの金額の倍が請求されてビックリしたそうです。しかし、金額が倍になったとは言え、想定より2000円ちょっと増えただけなので、嫌な気分だったそうですが、言われるままに支払って帰ってきたそうです。

私はその話を聞いて、そんなヒドイ寿司屋が日本国内に存在するのかと疑問に思い、実際に、そこに行ってみました。そしたら、非常に驚きました。店に入ると、確かに店員は「オーダーこちらで受けます。提供は2カンとなってます。」と口では説明します。しかし、値段の表記が1カンである事などには、一切言及しませんでした。だから、私の友人が嫌な思いをしたという話を予め聞いていなければ、恐らく、私も友人と同じ勘違いで会計の時に嫌な思いをしたような気がしました。

今回、嫌な思いをしたという友人は、何回も日本に来ていて、大学で日本語を学んでいたらしく、日本語もかなり上手です。それに、アジア系の方なので、「それお願いします。」とか、短いセンテンスの会話をしただけでは、外国人とは分からない感じです。だから、希望的観測かもしれませんが、店側も見ただけで外国人と一目瞭然な方には、もっと丁寧に説明するのかもしれません。とはいえ、日本人の私ですら困惑するシステムを使っている立ち食い寿司業界に対し、「いくら何でも姑息過ぎないか!?」という呆れを感じ、それが良くない事をハッキリと主張しなければと思いました

そんな事が日本国内で起きてしまう理由に、私なりの持論があります。それは、日本人はありとあらゆる物事を上下関係で見る習性があり、特に「飲食店」に対しては、かなり自分より低く見ている人が多いと思います。そして、その事が日本の飲食店を甘やかしている原因になっていると思うのです。例えば、日本では飲食店の値段に疑問を持つような人を見かけると、必ず「イキじゃない!」とか、「もっと稼げ!」、「だったら外食するな!」と客側を罵り始める人達がいますよね。

それを通訳してみると、「飲食店にフェアさを求めるなんて無理なんだから、それをグジグジ言うなんてイキじゃない!」とか、そういう事になるはずです。雰囲気的には、「相手は子供なんだぞ!大人が何を真面目に取り合ってるんだ?」的な、低く見ているニュアンスが無くもありませんよね。

そして、飲食店側も自分たちが甘やかされる側という事を、何となく気づいていて、他の業界に比べてやりたい放題な感じになっています。例えば、飲食業界は上場企業でも、条例で禁止されている地域で客引きをやっているのが黙認されていたりします。多くの業界では、条例違反なんて許されませんよね。他にも、「Wi-Fiあります」と書いてある喫茶店のネットが全く使えなかったり、居酒屋などに入れば、カタコトの外国人店員の説明では全く理解できないような複雑な料金システムだったり、他の業界で起きたことなら大クレームに発展しそうな事が日常茶飯事です。

では、なぜ飲食店が自分よりも下に感じる人が多いのかと言うと、言いにくいですが、まだまだ日本において、飲食業界の立場が低いからでしょう。今回、私が話題にした立ち食い寿司店の嫌な話しだって、最大で1人数千円の話です。そして、そこで働いている方といえば、世間のステレオタイプなイメージ的には、学歴も高くなく、低賃金・長時間労働で大変な人という印象でしょう。

だからこそ、多少、飲食店の料金やサービスにフェアさが欠けていても、多くの人が「それぐらい許してやれよ!」という上から目線の反応をしがちなんだと思います。もし、飲食店に対して自分と対等な存在と感じている人は、会計だってフェアに対等にすれば良いと思うだけで、「飲食店に対して、イキに振る舞うべき」とか、そんな思考回路にはならないはずです。

さて、私は経済学とかは分からないので、経済学的に正しいかどうかは分かりませんが、私の働くテレビ業界を振り返ると、飲食店ももっと世間から厳しい目にさらされた方が良いのではと思います。例えば、以前はテレビ業界を、視聴者は飲食店と同じように自分たちより低く見ていました。だから、テレビでヤラセなどのインチキ情報が放送されていても、「所詮テレビだから」と甘くに見ていました。

しかし、テレビの立場が上がり、視聴者との関係が対等になった今は、少なくとも、テレビが科学的根拠の無い健康情報や、心霊商法の片棒を担ぐような事は少なくなってきているはずです。(過剰コンプライアンスや、テレビが面白くなくなったと言われる問題もありますが・・・)

また、視聴者の厳しい目線がテレビに向けられたお陰で、我々、テレビ関係で働く人の労働環境も良くなってきたような気がします。10年以上前は、暴力・長時間労働・セクハラなどが、当たり前とも言える勢いでした。しかし、今は厳しい目線が、テレビ局や芸能事務所に向けられて、以前に比べたら、業界人だからといって、やりたい放題ではなくなってきています。

というわけで、飲食業界に対しても、一般の人が対等に感じるようになって、厳しい目を向けただけで、あらゆる問題が改善されるような気がします。客としても、働く側にも結果的にメリットがありそうなので、もっと飲食店に対して対等に接してみてはどうでしょうか。そして、締めくくりとして、飲食店と対等に接したい私から、立ち食い寿司店に一言。「立ち食い寿司業界、ちょっと姑息すぎないか!?」

※他にもブログで、こんな記事を書いています。
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※このブログの著者プロフィール
渡辺龍太 (放送作家・即興力養成コーチ)
ブログ:http://kaiwaup.com
Twitter: https://twitter.com/wr_ryota

著書:『朝日新聞もう一つの読み方』(日新報道)
紹介ブログ:朝日新聞の押し紙問題!武田邦彦教授の解説が痛快すぎる
(Amazon メディアと社会部門 1位獲得)