トランプ米大統領が6月1日、選挙公約通りパリ協定から離脱を発表しました。「私はピッツバーグ市民によって大統領に選出されたのであって、パリではない」との言葉は、ラストベルトの支持者の胸に刺さったのでしょうか。
さて、パリ協定の離脱に対しワシントン・ポスト—ABCが6月2〜4日に行った世論調査では「強く不支持」と「いく分支持」が59%を占めました。「強く支持」と「いく分支持」の28%を大幅に上回ります。ワシントン・ポスト紙がアマゾンを親会社に持つリベラル紙で、かつABCも親会社ディズニーがパリ協定賛成派ですから、当然の結果でしょう。
反対派が圧倒的なのは、バイアスのせい?
(作成:My Big Apple NY)
上記の世論調査では「パリ協定離脱はけしからん」というメディアの風潮と整合的ですが、離脱支持派は地球温暖化論争に懐疑的な方々だけでなく環境保護派も含め少なからず存在します。特に環境保護派は、パリ協定に対し「石油輸出国機構(OPEC)の協調減産と同じで拘束力がなく罰則もない」と批判的。むしろ各国と結託するより「独自で温室効果ガス排出量の削減を目指すべき」と主張しているのですよ。加盟していないニカラグアと同じような意見ですね。トランプ米大統領の決断を「ホームラン」と評価したノートルダム大学のジョセフ・ホルト准教授もその一人。またトランプ米大統領の“米国第一”の行動により、「米国企業や州政府が独自に排出量削減に向けた努力を強化あるいは加速させうる」との見方もあります。こうした認識を持つ方々は、2025年までに2005年比で26〜28%減少させるという米国の目標に向け、民間と州・地方政府が独自に達成を試みると楽観的です。
確かに9州(カリフォルニア、コネチカット、ハワイ、NY、ノースカロライナ、オレゴン、ロードアイランド、バージニア、ワシントン)、125市、902社、183の大学から成る団体“We are still in”が誕生し、政権の決定に反し温室化ガスの排出量削減を目指す意思を明確にしています。そもそも、全米50州のうち29州が再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)を設定済み。トランプ米大統領が会見で言及したピッツバーグを頂くペンシルベニア州も、その一つ。少なくとも州政府や民間レベルで、パリ協定順守の枠組みを維持する機運は残っています。
(カバー写真:Mark/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年6月8日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。