13日、14日に開催されたFOMCでは政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を年0.75~1.00%から1.00~1.25%に引き上げた。投票メンバー9人のうち8人の賛成多数での決定となり、ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は金利据え置きを主張して反対票を投じた。
今後の利上げペースは、年内さらに1回を見込み、今回を含めて年3回とする中心シナリオを据え置いた。2018年も3回、2019年も3回程度の追加利上げを見込み、政策金利を長期の中立金利見通しである3%に達成させるという利上げシナリオを維持した。
4兆5000億ドルの保有証券縮小計画についても年内着手と正式に表明し、その手段も示した。こちらも予想通り、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなる。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。
これまでのイエレン議長などの発言から、これらの動きはほぼ予想されていたものとなった。ところがこの日の米10年債利回りは一時2.10%と前日の2.21%から大きく低下していたのである。これは噂が売って事実で買う、といった動きではなかったように思われる。
米債が買われたきっかけは、この日発表された5月の消費者物価指数(CPI)であった。CPIの総合指数は前月比0.1%の低下となり、予想外の低下となった。前年同月比では1.9%上昇となり、前月の2.2%の上昇から上昇幅は縮小した。
食品とエネルギーを除くコア指数も前月比0.1%上昇と予想を下回り、前年同月比では1.7%上昇と、2015年5月以来の低い伸びとなっていた。
日銀の物価目標はコアCPIであるが、FRBの物価目標はPCEデフレーターの総合指数である。しかし、物価をみる上ではCPIも当然意識せざるを得ない。
イエレン議長はFOMC後の会見で、最近のインフレ指標の低下は一時的な事柄が要因と指摘していたが、市場では日銀ほどではないにしろ、物価目標達成はなかなか難しいと読んでいるようである。ちなみにFRBは2018年には2%に達すると予測している。
FRBにとっては正常化に向けて、米長期金利が過剰反応して急騰するよりも、落ち着いた動きの方がやりやすい面もある。しかし、今回の米長期金利が2.6%あたりを目先天井として上がりづらい状況となっているなか、昨日は2.1%と直近の下限程度に低下したという事実の背景には、当局者と市場参加者の物価や今後の利上げペースに対する見方に乖離が生じているようにも伺える。
これがどのように修正されるのか。個人的にはひとまず政策金利は2%程度までの上昇に止め、保有証券縮小計画については淡々と実行することで、正常化はいったん終了させる。その後は物価、経済動向を睨んでの中立的なスタンスに望んでも良いような気もするが、どうしても政策金利は3%という長期の中立金利見通しにまで引き上げる必要性をFRBは意識しているのであろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年6月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。