コスパ重視の最強の読書法

荘司 雅彦

現代はSNSや動画配信、音楽配信など様々なサービスが”余暇時間の争奪戦”を繰り広げているため、多くの人々は読書に割く時間を取れなくなりつつあります。「本なんて読む必要はない」という人には関係ありませんが、読書をしたいけど時間がないという人にとっては厳しい時代です。つい、スマホに目を向けてしまうとあっという間に時間が経ってしまいます。

そこで、今回は、効率的な読書法について考えてみたいと思います。
小説のように娯楽として読む本は、自分のペースでストレスがかからないように読めばいいでしょう。効率性が問題となるのは、実用書やビジネス書です。実用書やビジネス書は、「役に立ってナンボ」のものですから、実際に活用できなければ意味がありません。読書に費やすコスト以上のメリットがなければ読む意味がないのです。

読書のコストは、決して「本代」だけではありません。ほとんどの書籍の場合、本代よりも「読む時間」の方がコストが高いでしょう。

仮にあなたの時給が2000円だとすると、読書に2時間割けば(働いていたら得られたであろう)4000円を失うことになります。経済学でいう「機会費用」という概念です。1500円の本を買って4000円の機会費用を払ったら、5500円のコストがかかっていることになります。だとすれば、その本から5500円以上のメリットを得なければ、その本の読書はマイナスとなってしまいます。

私が実践しているのは、以下のような読み方です。
まず、「まえがき」と「目次」を読んで、その本の内容を大まかに把握します。片手に付箋を持ちながらパラパラとページをめくっていき、”自分にとって”重要と思われる部分に付箋を張っていきます。新書くらいであれば、どんなに長くとも30分以内でこの作業を終えることができます。

最大のコツは「未練を残さず捨てること」です。どうしようかと悩んだ時は付箋を貼らずに捨ててしまいましょう。この作業に慣れるまでは、付箋を貼る箇所で悩んでしまうので時間がかかるかもしれません。しかし、当初の試行錯誤の時間は「慣れるための初期投資」と割り切りましょう。

後は、付箋を貼った部分をスマホのメモなどに転記します。私は、iPhoneのメモに音声入力しているので、(付箋の数にもよりますが)長くても15分くらいで終了します。それをプリントアウトしてトイレの内側のドアにでも貼って日々目を通すようにしておけば、忘却を防ぐことができます。時々、スマホのメモに目を通す習慣を付けておいてもいいでしょう。

ここで重要なことは、パラパラとページをめくることと転記することです。
人間の脳は私たちが思っている以上に賢いようで、ザッと目を通すだけで付箋を貼らない部分に何が書いてあったかを”大まかに”認識できるのです。あくまで、”大まかに”ですが(これを私は「スキャニング法」と呼んでいます)。そして、転記することによって内容の理解が深まるのです。嘘だと思ったら、手近にある本の一部を転記してみて下さい。目で読んでいるだけより、遥かに内容が深く理解できることがご理解いただけるはずです。
薄手の新書であれば、(慣れれば)30分程度で以上の作業を終えることができるようになります。

後は、転記した部分に繰り返し目を通して頭に叩き込み、実際に使ってみましょう。上手く使いこなせれて、本代と作業時間以上のメリットが得られればOKです。残した本文は、実際に使う前に悩んだり、もっと詳しく知りたい時に読み返せばいいのです。

私の新著「説得の戦略」は、その方法を徹底するよう工夫しました。

本書の33の項目の冒頭に「ポイント」という短文を書きました。違和感のないように「ポイント」としましたが、「…しよう!」というように具体的行動を示しています。そして、最後に、どうしてそうするのかを示す「エビデンス」(根拠)を、これまた短文で書いています。

ですから、最初のスキャニングでポイント部分に付箋を張っていけば、早い人で数分、遅い人でも15分で張り終えることができるでしょう(どこに付箋を貼るかで悩む必要がありませんから)。33のポイントのうち、”あなたにとって”重要と思われる部分を転記すれば作業終了。33のポイント全てを転記しても合計30分程度で終わります。ポイントとエビデンスを適宜組み合わせて転記してもいいでしょう。どんなにゆっくりやっても1時間以内で終了します。後は、頭に叩き込んで実践あるのみです。実践する前に不安になれば本文に戻って下さい。

ということで、拙著のPRになりましたが(笑)、是非とも書店で手にとって33のポイント全てに目を通してみて下さい。付箋を貼る必要がないので、数分程度でスキャンもすることができます。目を通してみて、あなたにとって役に立たないと判断したら決して買わないようにして下さい。あなたにとって無益な本を買うのは本代の無駄ですし、「買った以上読んでみよう」と思って読み始めたら大切な時間の無駄遣いになります。

本書は、ほとんどの人にとってお役に立てると思ってはいますが、価値観は人それぞれ。無駄なものを容赦なく切り捨てる勇気こそ、現代社会で最も重要なノウハウなのです。

荘司 雅彦
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2017-06-22

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。