【映画評】ジーサンズ はじめての強盗

ジーサンズ はじめての強盗

ウィリー、ジョー、アルの3人は、慎ましくも幸福な老後生活を送っていたが、長年勤めていた会社から一方的に年金を止めるとの通達を受け、ショックを受ける。愛する家族や仲間たちと、幸せな余生を送りたい。そんなささやかな願いを叶えるため、ジョーはウィリーとアルに「俺たちの年金を取り戻そう!」と銀行強盗を持ちかける。今まで真面目に生きてきた3人は、すべてをかけて人生最大の勝負に挑むが…。

年金を一方的に止められた老人3人が初めての銀行強盗に挑戦するコメディ「ジーサンズ はじめての強盗」。老人の犯罪コメディというよくあるジャンルだが、何しろ演じるのが、モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン。主演全員がアカデミー賞受賞の名優なのだから、細かいツッコミどころは、ゆったりとかわして、余裕のお芝居で笑わせてくれる。もっとも内容は、弱者に冷たい高齢化社会を照射したもので、笑いごとではないのだが。無論、銀行強盗は犯罪なので手放しで応援するわけにはいかないが、実際に理不尽な理由で年金を奪われても、なす術がない現実を考えると「こんなこと、やってくれちゃったら最高!」と思わせる、一種のファンタジーと考えれば楽しめる。

利益優先なのは、長年勤めた会社だけでなく、銀行も同じ。その銀行で偶然、強盗に遭遇したことから「自分たちにもやれるかも」と思って、ワルに弟子入りするという短絡的な思考が苦笑ものだが、そこは、年金なしでは生きてはいけない老人三人組、失うものなどない!というやけっぱちの強みがある。スーパーでの予行練習(万引き)や射撃のレッスン、指南役の強盗の心得のうんちくなど、おとぼけぶりに笑いながらもフムフムと思わずうなずいてしまった。

そして、いよいよ本番へ。それは意外なほど綿密な計画で、楽観的なご都合主義の展開には、最後の最後に粋なプレゼントまであって、嬉しくなる。歌手としても活動している往年の美人女優アン=マーグレットは、今も変わらず美しくてキュートだし、名優3人にそれぞれ見せ場がちゃんと用意されていて、ザック・ブラフ監督が彼らをリスペクトしているのが伝わってきた。行け、ジーサンズ!80歳超えはまだまだ“若い”。
【60点】
(原題「GOING IN STYLE」)
(アメリカ/ザック・ブラフ監督/モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキン、他)
(痛快度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年6月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。