市川海老蔵さんは、6月26日に16回もブログを更新し、こう告白しています。
「居ても立っても居られないとき、私はブログが1つの支えになってます。」
人はなぜブログを書くのでしょうか?
多くの有名人はブログを書いてますが、多くの場合、目的はビジネスでしょう。
ファンを惹きつけたり、場合によってはアフィリエイトでモノを販売したり。
でも、それだけではないと思います。
ビジネス目的は薄い普通の人は何故ブログを書くのでしょうか?
それは、ブログを書くという行為が「癒し」になるからです。
実は、ブログの原型とも言える「日記」は以前から人を「癒す」効果を指摘されてきました。
認知行動療法では、うつ病の改善のために「日記」を書くという日記療法が昔から行われています。「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、認知行動療法とはが、認知に働きかけて、こころのストレスを軽くしていく治療法のことです。
2016年度宮崎大学の研究発表によると、薬で改善しない「うつ」の47.6%の人は認知行動療法で症状がほぼ消失していると言います。
認知行動療法の一つ手法である日記療法についての効果を専門機関では、こう説明しています。
悩んでいる人にとって、その日の出来事を振り返り、みずから内省する契機となります。
その人自身が主体的に自分の不安、感情を自分なりに受け止めて行こうとする態度を助長します。
治療者との日記を通したやりとりは、精神科面接、カウンセリングに匹敵するもので、自己理解を深め、不安などの感情を受け止め、それを消化し、自分のあり方を修正する原動力となります。
記録として残るので、日記のコメントを何回となく繰り返して読むことが可能となり、そこから十分時間をかけて自己修正ができます
出典:公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団
お気づきの通り、ここで言う「日報」と仕事で書く「業務日報」は少し違います。
たとえば、業務日報であれば、
① その日に実施したこと
② 気づいたこと、反省点
③ 明日以降に向けて改善策
しかし、個人が自分でつける「日記」について、私の予備校時代の恩師である表三郎氏は著書『日記の魔力』(サンマーク出版)の中でこう語っています。
「日記に『感想』を書く必要はない。自分がその日、取った行動を客観的に記録すればそれだけで十分なのだ。」
つまり、日記は「自分の状態を把握するため」ためのセルフチェックなのです。
最近では、ブログはうつ対策として日記と同様な目的で活用されています。
ブログでの日記治療をされているあるブロガーさんはこう述懐しています。
「過去のブログを読み返すことにより自分の現在地を確認することができます。おまけに、日常の些細なことに気がつくようになりました」
ブログや日記をつけて読み返すことで、さまざまな側面を持つ自分という人間の全体像が客観的に観察できます。そのことによって認知の歪みなども解消され、セルフイメージを修正することが出来るのです。
「ときには嵐に出会うかもしれない。ときには凪のなかで船足が泊まってしまうこともあるかもしれない、それでも日誌をつけていれば、それさえもかけがえのない人生の1コマであったことに気づく日が必ずくる」
業務日報のように無理に改善策を作らなくても、表氏の言うように日記やブログ書くことで、私たちは時間の経過の中でゆっくり癒されて回復していくのです。
ブログの場合には、さらに日記にない次のような効果もあります。
先ほどの日記治療をされているブロガーさんはこう言ってます。
「日記を書く気力が低下したことはありました。しかし、ブログを読んでくれる仲間の体験や意見は参考になりますし、いい刺激になりました。」
海老蔵さんも、先ほどのブログでこう書いています。
「こうしてブログでも皆様も繋がっている事も私の支えになっています。」
「皆様のコメントやこころの在りようを表す事で少しだけ気を取り戻せるような気もするのです。」
ブログを書くことは、心にとって癒し効果のある行為なのです。
自分でブログを新たに始めるのも良いですし、他のブロガーさんに励ましのメッセージを送るのも、良いかもしれません。
真田 茂人
リーダーシップ教育コンサルタント 日本サーバントリーダーシップ理事長
アゴラ出版道場二期生
早稲田大学卒業後、リクルート、外資系金融機関、人材サービス会社設立を経て、2001年に「サーバントリーダーを育成し、『良い組織』創りを支援する」というビジョンを掲げる㈱レアリゼ設立、代表取締役就任。日本を代表する企業の幹部教育や組織開発を数多く手掛ける。2004年NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会を設立。理事長就任。
心理学やカウンセリングをベースとした教育的手法を用いたコンサルティングを実施している。
著書: 『サーバント・リーダーシップ実践講座』『星野リゾートの事業戦略はなぜ社員に支持されるのか』ほか多数。