インターネットの自由が死ぬ日が来たか

先日、ウェブライターとして有名なヨッピーさんが「水分を取らずに30時間我慢してから飲む水が最高に美味かった件」という記事をアップロードしていました。コカ・コーラ社のいろはすというミネラルウォーターをPRするための記事でしたが、私は読んでなかなか楽しめました。

バカバカしいチャレンジですし、ドンドン顔色が悪くなっていくのも「ああ、人間は水分が必要なんだな」と思わせるに十分なものでした。しかし残念なことにこの記事は炎上してしまい、現在は見ることができなくなっています。(ご指摘について | SPOT(スポット))。見る人がマネをすると危険だから、ということだそうです。何回もお断りとして「真似しないで下さい」と書いていたにも関わらず、です。

しかしこの記事を読んだユーザーの皆さんは記事が非公開になることで満足なのでしょうか?私にはインターネットの自由がまた一つ死んだ、と感じました。

東日本大震災の自粛・不謹慎の抑圧

この件で思い出すのは東日本大震災えの不謹慎・自粛ムードです。東日本大震災が発生した当初、多くの人が混乱していましたが、そこでTwitterを始めとしたネット上でも「◯◯をするのは不謹慎だ」「◯◯は自粛すべきだ」と言った声が多く上がっていました。

そこで私はアゴラに地震発生から2日後の2011年3月13日、「不謹慎・自粛ムードに関する反論 – 松本孝行」というエントリーを投稿しました。この時、多くの人にシェアしてもらい、賛同してもらったのを覚えています。その後、「東日本大震災で「ユーモア」が許されないこの緊張状態は危険 ‐ 岩崎聖侍」という私の主張を補強していただくような、エントリーも投稿されました。

アゴラの力がこの時どの程度だったかは計測できませんが、徐々に不謹慎・自粛ムードが弱まっていき、各地で日常が取り戻されていきました。もちろん被災地はまだ復興途中でしたが、それ以外の地域で無駄な自粛は減っていきました。

ユーザーの小さな善意が自由なネットを殺す

もちろんこれを掲載したSPOTの事情やコカ・コーラ側の事情はわかります。少しでもネガティブに働くのであれば、せっかくのプロモーションも台無しですから、企業側としてはリスクを取りたくないのも当然でしょう。またSPOT側も企業にマイナスに動く記事をそのまま載せておきたくないという気持ちもよくわかります。

ユーザーも確かにこの時期、脱水症状などが気になるのもわかります。何もヨッピーさんやSPOT、いろはす側に対して徹底的に抗議したいとか、潰してやりたいという気持ちがあったわけではないと思います。あくまで皆さん善意によって「真似する人が出たら危ないんじゃ?」と発言したのでしょう。

しかしこういった善意がネット上の自由を殺す場合もあるのではないか、そう思うのです。よく「地獄への道は善意で舗装されている」なんて言われていますが、これはイギリスやドイツのことわざだそうです。3.11の東日本大震災でも、多くの人が自粛や不謹慎を求めたのは善意からなはずです。

しかしその善意が行き過ぎた時、多くの人は自由を殺されてしまうのではないでしょうか。もちろん「真似する人が脱水になる可能性」は少なからずあります。そうならないために「真似しないで下さい」という注意書きを書いていたわけですが、それでも、水を30時間飲まないという企画は公に公表すべきものではなかったというのでしょうか。

ネットは規制だらけのテレビの後を追うのか

テレビタレントは口々に「今は規制が多くなってできないことだらけになった」と言います。昔のテレビはハチャメチャなところもあり、しかしそれが面白かったともいえます。それが今は規制やスポンサーとの兼ね合いで、できないことが増えてしまったそうです。だから今はグルメ番組やクイズ番組など、無難なものばかりになっています。

インターネットも今回のような企画で非公開となるのであれば、無茶な企画はできなくなるかもしれません。ヨッピーさんやARuFaさんのような才能あるライターさんが規制・自粛でできないことだらけになっていくのではないかと危惧します。

今回の記事非公開は一部でしかありません。インターネットもまた、テレビと同じように規制だらけでクイズ番組などの無難なコンテツだらけになるべきなのでしょうか。私はネットはもっと自由であってほしい、そう思います。なので今回の記事非公開は非常に残念でなりません。