特殊詐欺の予防と高齢者への支援

このところ、高齢者によるATMからの振り込みを制限するという報道が相次いでいる。たとえば、佐賀東信用組合スルガ銀行十八銀行は、過去3年間ATMから振り込みをしていない70歳以上の高齢者はATMからの振り込みができないようにしたそうだ。みなと銀行も同様で、記事によればATMの利用制限は兵庫県内に本店を置く金融機関では初めてという。

警察庁の発表によれば、2016年の特殊詐欺認知件数は14,151件(前年比+2.4%)で、被害額は406.3億円(-15.7%)と高水準が続いている。なかでも、還付金等詐欺が影響して振込型の認知件数が増加しているそうだ。金融機関によるATMの利用制限は、これを水際で防ごうという対策である。

老化の進行は人によってまちまちである。東京大学秋山弘子教授の研究によれば、男性の19%は60代から急激に自立度が下がるのに対して、70%は75歳ごろから徐々に下がり、11%は何歳になっても元気なままだ。女性の場合には、12%は60代からで、88%は75歳ごろからである。金融機関は一律に70歳以上を対象としているが、高齢者一人ひとりの状態に応じてきめ細かに対応していく必要があるかもしれない。

また、高齢者がなぜ騙されたのかについても分析する必要がある。何でも一人で判断しようとする性格が影響しているのかもしれない。家族や近隣からの孤立が原因かもしれない。

原因を断つ対策、たとえば高齢者を地域社会に包摂する活動などを進めていかないと、犯人グループが新たな手口を使いまた被害が増加する恐れがあるからだ。