【映画評】メアリと魔女の花

メアリと魔女の花 オリジナル・サウンドトラック

明るく活発だが、ちょっと不器用でおっちょこちょいの少女メアリは、自分のそんな性格や赤毛にそばかすというルックスを気にして不満を抱えていた。メアリはある日、森で7年に1度しか咲かないという不思議な花“夜間飛行”を見つける。その花はかつて魔女の国から種を盗み出された禁断の花だった。一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、魔法大学エンドアへの入学を許されるが、メアリがついたひとつの嘘から、大事件に発展してしまう…。

魔女の国から盗み出された不思議な花を巡って少女が冒険を繰り広げるファンタジー・アニメーション「メアリと魔女の花」。原作は英国の女性作家メアリー・スチュアートの児童文学。ジブリ出身のスタッフが立ち上げた新しいアニメ制作スタジオ、スタジオポノックによる第一回長編作品だ。ビジュアルや世界観にジブリのカラーが色濃いので、既視感があるが、それは同時に、安心感でもある。ジブリの影響から離れるというのは容易なことではないということがよくわかるが、その中で、米村監督はヒロインの少女メアリのキャラクターに今までとは違うテイストを埋め込んだ。

魔女や魔法をモチーフとしながらも、メアリはどこまでも人間の女の子。欠点や間違いだらけだが、それを含めて人間の存在を肯定し、運命を切り開くのは、魔法の力ではなく、自分自身なのだと高らかに歌い上げる。ただ、すべての魔法を無効にする力もまた魔法であるという点に矛盾を感じないでもない。いずれにしても、特別な力を持つことは、諸刃の剣で、それ相応の覚悟が必要だということだろう。

「私だって変わりたいんだから!」と叫んでいたメアリは、一晩の不思議な冒険で確かに成長した。ただ、これからメアリは、何度も人生の問題に向き合わなければならない。発展途上のメアリの姿に、新しい一歩を踏み出したアニメスタジオ、ポノックが重なって見える。これからどんな独自色を打ち出してくるのか、期待したい。
【60点】
(原題「メアリと魔女の花」)
(日本/米林宏昌監督/(声)杉咲花、神木隆之介、天海祐希、他)
(成長物語度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。