【映画評】カーズ/クロスロード

真っ赤なボディのスポーツカー、マックィーンは、これまで数々のレースで優勝し華々しく活躍してきたが、ベテランとなった今は、最新型のレーサーに勝てず苦戦を仕入れらている。焦ったマックィーンは無理なレース運びで大きなクラッシュ事故を起こしてしまう。運にも世間からも見放され、自信も喪失、引退という言葉が脳裏にちらついていた。引退か、再起か。人生の岐路にたたされたマックィーンは決断を迫られるが…。

車を主人公にした大人気アニメーションシリーズの第3弾「カーズ/クロスロード」。クロスロードとは、人生の岐路の意味で、華やかで天才的なスター・レーサーであるライトニング・マックィーンが、ベテランとなり引退を考えて苦悩するが、新たな相棒やかつての仲間の助けで再生していく姿を描く。ディズニーのアニメーションはいつも物語が秀逸で、現代社会をしっかり照射しているが、今回はズバリ“老い”だ。アニメの主要ターゲットである子どもたちが知るはずもない、人生のやるせなさを描いて、完全に大人モードである。

過去の栄光、世代交代、自らの体力、技術、モチベーションの低下…。直面する問題は山積みで、主人公のマックィーンは文字通り、人生の岐路(クロスロード)に立たされる。マックィーンは、果たしてどんな道を選ぶだろうか。終盤の驚きの展開は、おそらく大方の予想を裏切るものだ。しかも、それが実に心地よい。マックィーンの相棒となるトレーナーで、イエローのボディがキュートな新キャラ、クルーズ・ラミレスとのやりとりが楽しくも感動的だ。レースシーンの迫力や雄大な自然描写、表情豊かな車たちの魅力は健在である。映像は緻密、キャラクターは個性的、メッセージは深い。やっぱりこのシリーズは秀作揃いだと再認識した。日本語版のエンドソングは奥田民生が歌う「エンジン」。“夢の続きに行ってみよう”と、軽やかに歌いあげる。そう、“明日も目の前に道は続いている”のだ。この映画に励まされる大人はきっと多いだろう。
【80点】
(原題「CARS 3」)
(アメリカ/ブライアン・フィー監督/出演(声)オーウェン・ウィルソン、、、他)
(大人向け度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月16日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。