総務省が英語教育について文部科学省に勧告:報道しない自由について

総務省に行政評価局がある。総務省設置法が規定する「各府省の政策について、統一的若しくは総合的な評価を行い、又は政策評価の客観的かつ厳格な実施を担保するための評価を行うこと」を実施する組織である。行政評価局が7月14日に『グローバル人材育成の推進に関する政策評価』を公表し、その結果に基づいて必要な改善措置を文部科学省に勧告した。

「日本人の海外留学の促進」については「短期留学の政策上の位置付けを明確にし、次期計画に反映する」、「中高の生徒・英語教員の英語力の向上」については「成果指標の達成のための有効な対策、達成状況の的確な把握が必要」といったことが勧告の主な内容である。

以前に『「英語が使えない英語教員」とは情けない』という記事を書いたことがあった。このことも触れられている。政策評価には次の記述があった。

英語教員の英語力については、第2期計画において、平成29年度までに、英検準1級、TOEFL iBT80点、TOEIC730点程度以上を達成した英語教員の割合を、中学校で50%、高等学校で75%とする成果指標が設定されているが、中学校、高等学校ともに伸びは緩やかで、平成28年度時点で、中学校32.0%、高等学校62.2%にとどまっており、現在のペースのままではいずれも目標達成は極めて困難な状況となっている。また、英語教員の英語力に係る成果指標が英検等取得者とされていることなどに対しては、教育現場において十分理解が得られていない状況となっている。

このような事実認識に基づいて、総務省は文部科学省に対して「次期教育振興基本計画における英語教員に関する成果指標の設定に当たっては、教育現場の理解を得ながら、その達成のための有効な対策を講ずる必要がある。」と指摘している。

政策評価は大学・高校・中学での外国語教育全体を対象とし、指摘・勧告事項も膨大で、文部科学省は対応に大きな負担がかかる。しかし、勧告が出たこと自体ほとんど報道されなかった。メディアのニュース価値判断は大丈夫だろうか?

日本経済新聞は共同通信の配信を記事化しているが、取り上げたポイントは「総務省が教育委員会に聞いた結果、国の検定料補助を求める声のほか、授業に使う電子黒板、タブレット端末の配備拡充に向けた支援が必要との意見があった。」で的外れ。確かに総務省の政策評価には「ICT機器導入に対する国への意見・要望」という図表が掲載されているが、それよりも、たとえば英語教員の能力向上について有効な対策を求めたほうがインパクトは大きい。