荘司 雅彦氏が日本の農産物に関して記事を書かれている。ご本人が『農業分野に関して私はあまり詳しくない』と言われているので、私から補足したい。
日本の農産物は国際競争力がどの程度あるのか、実はあまり知られていない。庄司氏が『日本は通常の穀物や野菜、果物に関しては「比較劣位」にあり、高級果物に関しては「比較優位」にあると認識しています。』と書かれているが、この認識はあまり正しくない。
国際競争力は、国内で国産品が輸入品に対抗できるのか、という国内市場の点と、海外において日本産の輸出品が他国産品に対抗できるのか、という海外市場の2つの側面から考えられる。この両面から話をしたい。
まず国内市場について。
国内市場では、海外産品に輸入関税をかけることによって、国内産の競争力を保つようにしている。では、農産物にかかる関税は、どの程度なのだろうか。
農産物にかかる関税率は高いと思われているが、実は野菜については、そこまで高くない。おおむね5%以下である。とりあえず、じゃがいもが5%、たまねぎが10%と考えてもらいたい。
アメリカからでも、この関税を払えば、日本にじゃがいもやたまねぎを輸入することができる。しかし、現実の日本市場は北海道産でかなりの割合を占めている。この現実を、「日本産は関税で守られている」と見るか、「日本の『普通の野菜』でも競争力がある」と見るか、である。私は日本産に競争力があると思う。
オランダは世界中にトマトを輸出している。当然日本もターゲットで、日本のスーパーにもオランダ産のミニトマトが並んでいる。しかし、なかなか日本産のミニトマトを淘汰できない。これも3%の関税に守られていると見るのか、日本産に国際競争力があると見るのか、どちらかである。
続いて海外市場について。
香港やシンガポールのスーパーに行くと、日本産の野菜や果物が普通に並んでいる。決して高級品だけではない。
香港では鍋料理がよく食べられていることもあり、日本産の白菜やえのき茸がスーパーに山積みされている。決して高級品ではない。日本で普通に売られているものが、香港でも売られているのだ。特にえのき茸などは工業製品みたいなものである。広大な土地を必要とする産品ではないので、特に日本が国際競争力に劣るということも、ないはずである。
マスコミや農水省は、特別に関税が高い産品についてだけ声高に話をする傾向があって、こうした「普通の野菜」に関して話題にのぼることがない。だから多くの日本人は、日本の普通の野菜がどれだけ国際競争力を持っているのかを知る機会がない。
だから、誰かがもう少し客観的な事実をふまえて、日本農業の現実を知らせる必要があると思っている。私も機会を見て、積極的に発信していきたい。
前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師