宝くじ購入者にこそ「お金の正しい知識」を教えよう

内藤 忍

宝くじの販売が低迷していると日本経済新聞が報じています。2016年度の売り上げは8452億円で、売上のピークだった2005年度との比較では23%減っているそうです(図表も日経新聞電子版から)。

宝くじの還元率は45%程度に過ぎません。期待リターンはマイナス55%です。1000円買ったら、550円を差し引かれて、残りの450円を購入者の間で再配分する仕組みです。これほど割の悪い「ギャンブル」はありません。「宝くじ」ではなく「貧乏くじ」です。

宝くじを購入している人の多くは、このような事実を知らずに「夢を求めて」せっせと購入しているのだと思います。金融庁は投資信託や保険など金融商品の手数料の開示を金融機関に求めていますが、総務省が所管の宝くじには還元率の表示はありません。もし「あなたが購入した宝くじは、購入金額の55%が差し引かれ、残り45%の中から当選者への支払いが行われます」と書かれていたら、販売額は随分変わると思います。

また、収入の低い人ほど宝くじを購入する傾向があるというのが、世界的な傾向です。地方自治体の収益になっているのは事実ですが、相対的に貧しい人からお金を巻き上げる「貧乏人の税金」で税収を補うのは所得再配分に逆行しています。

販売の拡大のために、広告宣伝や賞金のさらなる高額化を進めるのではなく、例えば、宝くじを購入する人たちに投資教育のパンフレットを配布してはどうでしょうか。

宝くじを購入する人たちはお金に興味はあるけど、正しい金融の知識を持っていない人たちだと考えられます。「リスクとリターン」「期待値や確率」「ギャンブルと投資の違い(価値が生まれるか生まれないか)」といった基本的な知識と、投資信託の積立を使った少額からできる資産形成の方法を情報提供する。

お金に興味があって知識を持っている人たちは、既に金融商品や不動産などを使って資産形成を開始しています。貯蓄から投資への流れを作るために、次に取り込むべき人たちはお金に興味はあるけど知識のない人たちです。

もし宝くじの数千億円の収益が無くなったとしても、その購入資金が証券市場に流入し、資産形成に寄与すれば、国全体ではデメリットよりメリットの方が大きいと思います。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年7月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。