注目の加計学園問題についての閉会中審査について二本の原稿にまとめる。
小野寺質問で前川証言の信憑性が崩れた
この閉会中審査で判明したことの最大のポイントは、前川喜平氏が証言した、「総理も自分の口から言うわけにいかないから私が代わっていう」という和泉補佐官の言葉が本当だったとしても、和泉補佐官から「加計」の名が出たことはなく、獣医学部全般の話だったことが明らかになったことだ。
それを加計学園の問題についての話であり、加計理事長が安倍首相と友人だからだと解釈したのは、前川氏自身であって、そんなことを言われたわけでなかったのである。
そして、この和泉補佐官の言葉を、前川氏は担当部局に「こういう話があったよ」とだけ伝達した。
しかし、本当に総理の強い意向なら、大臣に報告しないとおかしいし、それが総理の意向であるが故に実現しないと困るのなら、①従うつもりなら確実に採用されるように担当部局にだめ押しをする、②どうしても受けたくない話なら、自民党の有力者に働きかけて総理の意向に抵抗するなどするかどちらかにするはずで、放置していたのは、「総理の希望を」聞いてもそれほど重要とは認識されていなかったことが分かる。
また、愛媛県の加戸前知事の話は実に説得的で、前回は無視した朝日や毎日もこんどはそういう訳にいかなくなったと思う。
安倍・加計の本当の仲に迫る
閉会中審査の答弁であとを引きそうなのは、安倍首相が、加計学園の戦略特区への申請を知ったのは今年の1月だと大串議員への答弁で答えたことだ。
民進党の大串博志衆院議員は、安倍首相が2013年の第二次安倍政権発足以来、加計学園の理事長、加計孝太郎氏と14度、食事やゴルフで接触していたことを示し「大問題なのでは」とただした。(国会でも細かいやりとりで首相と加計氏の会食などについては
ハフポスト等の速報記事を参照)。
安倍首相は「気の置けない友人関係」として、申請に関する依頼を受けたことや、依頼を受けて働きかけたとする疑惑は否定した。
「加計さんとは政治家になるずっと前からの友人関係。彼が私の地位や立場を利用として何かを成し遂げようとしたことは一度もなかった。時代のニーズに合わせて新しい学部に挑戦したいという話は聞いていた。過去にも様々な学部・学科を作ってきたが、具体的に何かを作ろうとしている、獣医学部を作りたいという話は、一切なかった」とした。
一般に政治家であれ、銀行の幹部であれ、頻繁に付き合う学生時代の友人となると、なかには、よほどの有力支援者であることもあろうが、普通は、むしろ、仕事上でのお願いなどしない安心できる人であることが多いのは事実だと思う。そうでないと警戒せざるを得ないからだ。
しかし、それなら、これだけ頻繁に会って、どんな話をしていたのか、加計氏と気が合うのかなどかなり詳細に語らないと、国民に信じてもらえないのは間違いない。
そういう意味で、「獣医学部の話はしなかった」というだけでなく「こういうお付き合いだ」ということを積極的に説得的に説明すべきだ。
本日の蓮舫氏とのやりとりも、そのへんが、焦点となろう。
もちろん、加計氏は首相と親しいことを背景に、それを各方面に「忖度」させるように、利用しているのだろうが、そこまで迂遠な交友関係の利用をどう取り締まるのか、難しいところだ。
また、昨日のやりとりで、気になったのは、普通のビジネスマンに比べて、学校法人関係者の脇が甘いことだ。
たとえば、文科省OBである木曽功氏が内閣官房参与と加計学園が運営する千葉科学大学学長を兼ねて、しかも、前川氏に千葉科学大学学長としての立場から陳情していたというのはお粗末。木曾氏は駐フランス大使館で前川氏の前任者であり特別に前川氏と親しい関係だ。
やはりこういう場合には、獣医学部問題が重要局面になったときから、内閣参与を辞するとか、獣医学部問題にはいっさい関与しないとかという倫理観が求められるはずだ。
以前は、大学経営などあまり利権と関係なかったのかもしれないが、いまは、営利企業とほとんど変わりないのに、大学人の意識がついて行っていないのが問題だ。
そもそも前川氏らが処分された天下り問題でも、実に脳天気に天下り規制の法律を無視していたのは、文部官僚の根本的問題だ。
昨日も、文科省OBBの加戸前愛媛県知事が「橋下徹なら文科省解体論を言ってる!」と言って大笑いになったが、退官後に知事として文科省の浮き世離れした“横暴”に気づいたということだろう。