【映画評】ザ・マミー/呪われた砂漠の王女

渡 まち子

中東で古代エジプト文字が刻まれた石棺が発見される。発掘に立ち会った米軍関係者のニックと考古学者のジェニーは、調査のために棺を英国へ輸送するが、途中でアクシデントが発生。ジェニーは何とか助かるが、ニックを乗せた輸送機はロンドン郊外に墜落し、棺は行方不明に。やがて石棺の中から、封印されていた古代エジプトの邪悪な王女アマネットが目覚める。なぜか傷ひとつない身体で助かったニックは王女の呪いに導かれるように棺を探すが、やがてアマネットの想像を絶する復讐が幕を開ける…。

古代エジプトの邪悪な王女が復讐のために現代に蘇るホラー・アクション・アドベンチャー「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」。1932年製作の「ミイラ再生」を最新技術で新たに蘇らせたものだ。モンスター・ホラー映画の老舗であるユニバーサル・スタジオが自社の自前のモンスターを次々に再生させる巨大プロジェクト“ダーク・ユニバース”の第一弾が本作である。ヒーローたちがチームを組むアベンジャーズやジャスティスリーグのモンスター版のような企画だが、その最初のモンスターがミイラというのは、意外というか、渋いというか。ともあれ古代の王女アマネットは、最初はミイラ状態でも、みるみるうちに美しくも恐ろしい姿になり、暴れまわる。4つの瞳、全身タトゥー、傲慢で邪悪、それでいて切ないキャラを演じるソフィア・ブテラは、完全に主役のトム・クルーズを食ってしまって、魅力的だ。

とはいえ、何をやらせても俺様キャラのヒーローになってしまうトムも、結構奮闘している。今回は“ハムナプトラ”な環境でのアドベンチャーだが、盗品をさばいて小銭を稼ぐセコい部分や、相棒とのやりとりでコミカルな芝居にも一生懸命に挑戦。もちろんトレードマークである身体をはったアクションも健在だ。舞台をロンドンに移してからは、ラッセル・クロウ演じるジキル博士(とハイド氏)が登場し、事態はにわかに急展開。このジキル博士率いる秘密結社プロディジウムが、今後のダーク・ユニバースの軸になっていく。正直、本作はトム・クルーズじゃなくても良さそうな“贅沢なB級大作”なのだが、大物俳優が揃うこの超大型企画ダーク・ユニバースは確かに楽しみだ。個人的には「大アマゾンの半魚人」に大いに期待!である。
【60点】
(原題「THE MUMMY」)
(アメリカ/アレックス・カーツマン監督/トム・クルーズ、ソフィア・ブテラ、アナベル・ウォーリス、他)
(大型企画度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年7月28日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。