風越学園設立準備財団のサマースクールがおわりました

軽井沢風越学園設立準備財団の4日間のサマースクールが終わった。

すごくいい時間だった!

忘れないように小学校プログラムの概略をメモします。

今回のテーマは、「○○すぎる世界」。
幼児は思いっきり遊びすぎ、小学生は一人ひとりの「すぎる世界」に没頭するのが目的。

本城も書いているけれど、今回のコンセプトが固まるまではけっこう大変だった。

「〇〇すぎる世界」。明日からサマースクールです。 (雑記)

ひとり一人の「○○すぎる」をどれだけ大事にできるか。

これが今回の4日間の軸。

しかし、前日のスタッフ打ち合わせでは、ついつい不安になって、

「ある程度テーマを大人が絞って,選んでもらう方がよいのでは?」

「ひとり一人になると、サポートする大人の手が足りなくなる可能性もあるから、今回はグループで探究するって決めた方がいいのでは?」

と、ついつい構成的にしたくなっちゃう。

しかし、スタッフ間でのやりとりの末、

「やっぱりひとり一人の探究を大事にしよう」という,軽井沢風越学園で目指すカリキュラムの軸「自己主導」に戻ることができた。4日間おもいっきり「○○すぎる世界」に浸れる場に。それを確認して当日へ。

活動をしょぼくするのはたいてい大人の先回りや不安だったりする。

いよいよサマースクールスタート。

1〜4年生、40人の子たちが20人ずつの2つのホームグループに分かれた。

まずサークルタイム。奥の山からは幼児の楽しそうな声がきこえる。お互いの様子を感じあえるのがいい。

「まずは出会いのアクティビティが必要だな」と、お互いを知り合うアクティビティ、一緒に遊んで関係性を創っていくアクティビティを次々にやっていく。

会場となった場所は豊かな森で、近くには川も流れている。このフィールドで月に2回思いっきり遊んでいる子たちが参加者のうち半分いたので、フィールドを案内してもらったりもした。

2時間近くのアクティビティで「あそんでいる」最中、衝撃的なセリフが。

「で、いつあそぶの?」

え…今遊んでいるじゃん…けっこう楽しんでるじゃん…

そうか、構成的なアクティビティは「遊ばされている」だけであって、「遊んでいる」んじゃないのか…

もちろん1人で初めて参加した子の中には,このアクティビティでちょっとずつ知り合ったり,関わったりする機会になっている子もいる。だからまったく意味がなかったとは思わない。でもこのセリフは強烈だった。

遊ぶと遊ばされる。

探究すると探究させる。

この違いは大きい。

このままでは「あそぶ」と「探究する」が分かれてしまう。

「探究させる」になってしまうかもしれない。

急遽スタッフミーティングをして午後のプログラムの相談。様々な工夫を用意していたのだけれど、

「小手先の工夫はやめて、ストレートに子どもと話そう」

「ひとり一人のこだわりたい探究テーマを決めよう」

と確認した。

 

昼食の後は2時間の自由あそび。学校の業間休みの6倍。でも2時間ってあっという間。

ここで子どもたちのパワーは爆発する。

川を下ったり、せき止めてダムを造ったり。川で木を船にして流す。どうすれば速くなるか工夫し始める。そこにすでに探究ははじまっていた。わざわざ「探究です!」とか言わなくても。

他にも虫を捕まえたり、草木であそんだり、ロープを張った遊具で遊び始めたり。この情景をスタッフと子どもたちと共有できたことは本当によかったと思う。「ああ、この感じ」が共有できた。「○○すぎる」ためには、本人がワクワクすること、没頭することからスタート。そしてそれは人によって違う。「わたし」からスタートしよう。

 

いよいよ午後。

一人ひとりの「○○すぎる世界」を考える時間。

この4日間、どんなことを○○すぎたいか。

「あそび」と「まなび」がどう溶け合うのか。

この重なりがどれくらい大きくなるのか。

 

まずは「○○すぎる」と「△△」を分けたカードを作り、いろいろなことばをつなげてみる遊びで、イメージをふくらませる。思考のきっかけづくり。思いがけない組み合わせが可能性をひろげる。

しばらくいろんな組み合わせをゲーム的に作って笑ったあと、いよいよ自分の「○○すぎる△△」を決定。

この時間をたっぷり取った。自由遊びから発展して考える子がいた。持っていた自分のこだわりで決める子もいるし、カードを合わせているうちにおもしろそうなテーマが生まれる子もいる。他の人のテーマに乗ってみる子もいるし、なかなか決まらずスタッフと対話を続ける子も。

決まり方も人それぞれ違う。

午後2時間の自由遊びが、発想を広げたり、やりたいことを身体がわかる時間になったよう。決まった人からじんわりとスタートすることにした。動いてみないと4日間続けたいテーマかどうかはわからない。だから、途中で「○○すぎる△△」は変わってもOK。

「いっぱいありすぎるダム」に決まった人たちは、シャベルを持って川に駆けていった。

遊具を作り始めた子たちも。

 

最終的に1日目にでてきたテーマはこんな感じ。

なかなか多様な「すぎる」がそろった。

活動中心のテーマの人は、活動しながら問いや「やりたい」が次々に生まれてくるだろう。まだイメージが広がっていない人たちに、ぼくらはどう過不足なく関わっていくのがいいだろう。まだまだこの場にいることに不安のほうが多い子もいる。ぼくらはそこにどういるといいだろう。

残り3日間で、一人ひとりはどんなふうに「すぎて」いくのだろう。

 

1日目終了後、ロジ担当のスタッフが明日の探究に必要そうな道具類を買い出しに回ってくれた。スタッフが泊まった貸別荘ではおいしい晩ご飯をつくって待ってくれていた。それぞれの人がメンバーを想い、動いてくれている。

さあ、ぼくらスタッフにとっても,チャレンジングな4日間がはじまった。

そしてここからの3日間、子どもの「○○すぎる」姿に圧倒されることとなった。


編集部より:このブログは一般社団法人「軽井沢風越学園」発起人、岩瀬直樹氏(東京学芸大学准教授)のブログ「いわせんの仕事部屋」2017年8月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩瀬氏のブログをご覧ください。