品川駅に抜かれた「渋谷駅」に何が起こっているのか

内藤 忍

少し前にJR東日本が発表した2016年度の管内の駅別1日平均乗車人数ランキングで、品川駅が37万1787人となり、渋谷を抜いてベスト5に入ったそうです(図表は共同通信サイトより引用)。

渋谷駅というと、「乗り換えが面倒な駅」という印象で、仕事の用事でもない限りは出来る限り下車しないようにしています。その原因になったのが、2013年3月に東急東横線と東京メトロ副都心線が相互乗り入れを始めたことです。時系列の推移を見ても、この年から乗降客数が落ち込んでいるのがわかります。

相互乗り入れで、乗り換えなしに渋谷駅を通過できることで利便性が高まり、乗降客が減ったというだけの理由ではありません。渋谷駅の再開発工事で駅の移動がストレスフルになっているのが原因の1つだと思います。

東急とメトロの相互乗り入れの際に、東急東横線の渋谷駅はヒカリエの地下に移動しました。その結果、井の頭線やJR山手線に乗り換えしようとすると、長い地下道を通って、階段を上がりかなりの時間がかかるようになったのです。駅が分散しすぎて、工事中ということもあり、迷路のようにわかりにくくなってしまったのです。

一方の品川駅は、乗降客が増えて混とんとしていますが、高輪口と港南口を大きな通路がつないでいて、京急とJRの乗り換えは比較的スムースです。新幹線だけではなく、羽田空港にも京急一本でアクセスしやすいのも地方や海外からも便利です。

品川駅はJR東海が力を入れているエリアです。今後はリニアモーターカーの始発駅としての発展も期待できます。将来は品川駅が今の東京駅のようなポジションになるかもしれません。

渋谷駅はまだ再開発途上で、これから街のデザインが完成形に近づけば、魅力的な街に変わっていく可能性はあります。しかし、JR山手線、JR埼京線、京王井の頭線、そして東急東横線が現在のような位置関係にあると、乗り換えの不便さを解消するのは難しいと思います。

品川駅の課題は、街に魅力がないことです。港南口の味気ないオフィスビルと高輪口の個性のないホテル群。便利な駅ではありますが、住んでみたい、行ってみたいと積極的に思える場所では残念ながら、まだありません。

品川と渋谷を比較してわかることは、鉄道会社の開発の巧拙によって、街が盛衰に大きな影響があるということです。再開発で渋谷がどう巻き返すか、これからの数年が勝負です。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。