最先端の市役所庁舎は、建てないこと⁉︎

井上 貴至

高度経済成長期に建設した市役所・町役場が更新時期を迎える。新たな庁舎の建設費用は、小さな自治体でも数十億円規模になることが多い。

しかし、これからの時代に、本当に立派な庁舎が必要だろうか?

ICTの本質の一つは、分散にある。

普段は市内の好きなところで仕事をして、必要な時に集まる「街中(まちじゅう)オフィス」という考え方もあるのではないか。

そうすることで、
費用が大幅に削減される
●自宅やカフェなど快適なところで仕事ができ、効率が上がる
部署の垣根(縦割り)を超えた仕事がしやくすなる
●現場で仕事をすることで、住民や企業と連携しやすくなる

などの効果が考えられる。

自治体クラウドを導入すると、庁内にデーターを管理するサーバーなどは必要なくなるので、税や社会保障など個人情報を扱う部署と災害時の対応をする部署などがあれば十分になるのではないか。そして、それくらいならば、既存の空きスペースでも対応できるのではないか。

庁舎は、江戸時代のお城ではない。敢えて庁舎を建てないということも選択肢の一つだろう。

少なくとも、今の庁舎と同じ発想で建てることは大失敗だ。50年前の発想で建てたものは、50年後には100年前の時代遅れのものになる。

数十年に一度の、数十億円にのぼる投資だ。コンサルに丸投げするのではなく、さまざまな先進事例を見て、自分の町に置き換えて考えてほしい。富山県の氷見市役所など面白い事例がたくさんある。企業は、もっと進んでいる。

日本で初めて、閉校した高校の体育館をリノベーションした富山・氷見市役所(井上氏ブログ過去記事より:編集部)

仮に、研修費用に数百万円かけても、ライフサイクルコストと比べれば、コンマ以下の話だ。そこは、絶対にけちるべきではない。

⇒ 全国の先進事例
全ての公務員に見てほしい!まちの未来をデザインする市役所
サイボウズ松山オフィス
「ビズリーチ(BizReach)」「Google」「吉本興業」イマドキの企業の新しい発想を生み出す職場環境

庁舎建設業務は、おそらく市役所の中で誰も経験したことがないものだろう。だからこそ、50年前の発想ではなく、50年後を見据えて、しなやかな頭で考えていくことが大切ではないだろうか。

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<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
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<井上貴至の提言>
間抜けな行政に、旬の秋刀魚を!


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2017年8月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。