「オプション取引」を知りたい人にわかりやすい入門書

尾藤 克之

左が岩田氏、右はソーテック社の福田清峰編集部長。

最近、書店に行くと投資系の書籍が目立つ。「必ず儲かる」「日本一簡単」「1日○○分」などのタイトルが多いが、そのほとんどに根拠が無い。しかも、投資家としては少々相応しくないような人が書いているものが少なくない。今回は、『世界一やさしいオプション取引の教科書1年生』(ソーテック社)を紹介したい。

著者の、岩田亮(以下、岩田氏)は投資会社を経営している(CFP、中小企業診断士も取得)。また、本書の世界一は「世界一わかりやすいトレード方法」という意味になる。従来は、スプレットやオプションを組み合わせた「合成ポジション」が多く、難解でわかりにくかった。初心者が扱うには少々ハードルが高かった。

本書では、著者の岩田氏が、自らの経験をもとに、単純な「コール売り戦略」によるパターンを公開している。投資は自己判断になるが、このコール売りの仕込みだけは理解しておいて損は無い。シンプルでわかりやすいことは間違いない。

まずは「オプション」を理解しよう

さて、突然だが、あなたが大のブドウ好きで、仕事でもワイナリーを経営するなど、ブドウに関わっていると仮定しよう。3ヶ月後に、ブドウを使ったイベントが開催されることになった。あなたは、プロジェクトの責任者に任命されている。この場合、もっとも気を使うのが3ヵ月後のブドウの仕入れコストではないだろうか。

「イベントの当日には、大量のブドウを用意しなくてはいけないとしましょう。これから旬に向かっているその品種のブドウの値段は、例年だとキロあたり1000円だとします。安くは無いですが、これまでの販売実績や、話題性などからそれなりの来訪客の見込みが立っています。ところが天気予報をみて不安になってきました。」(岩田氏)

「長期予報では、今年の台風は例年の数倍が予想されています。品薄になれば、価格が高騰することも考えられます。そんな時、証券マンから次のような金融商品の案内がありました。それは、3カ月後に、同じブドウを『キロあたり1000円で買う権利』でした。もし格安で売っていたら、ほしくはないですか?」(同)

これは、あくまでも仮定の話だが、このような商品があれば、「仕入れ値」を気にする必要が無くなる。台風がきて価格が高騰したとしても、キロあたり1000円で同じブドウを購入することができるからだ。もちろん、逆のケースも想定されるが、この金融商品を購入すれば価格高騰の悪夢からは解放されることになる。

「イベント時に、必要とされるブドウの量が1トンだとします。キロたり1000円だとすると100万円ですね。先ほどの『1000円で買う権利』があれば不安を感じることはありません。長期予報どおりにいくつかの台風がやってきたとします。ブドウの仕入れ値は、予想を超える『キロ2000円』まで高騰しています。」(岩田氏)

「1トンのブドウを仕入れるのに200万円が必要になります。でも、あなたは、1000円で買う権利を持っています。堂々と、1トンのブドウを仕入れることができます。このような権利を売買するのが『オプション取引』なのです。」(同)

本記事ではシミュレーションやメソッドまでは紹介しない。しかし、オプション取引を知らなくても、なんとなくイメージはついたのではないだろうか。

これからを救済するオプション取引

2008年に勃発したリーマンショックは、投機に明け暮れた金融機関が引き起こし世界中を大混乱に陥れた。私も仲間内で、当時の話題になることがある。誰もが口にするのが「バブルは影響なかったが、リーマンだけはきつかった!」。当時、私も生まれてはじめて訴訟を経験した。1000万円強の支払いを踏み倒されたためである。

数日前に、杯を交わして約束したにも関わらず、いきなり飛ぶから防ぎようが無い。相手にも事情はあるだろうが、私も引くに引けなかった。約1年後和解を受け入れた。勝ち取った額は200万円にも満たない。ここから弁護士費用と裁判費用を引いたら何も残らない。痛い勉強代だが、私の判断の甘さもあるのでまだ諦めがついた。

「現在、未曾有のリスクに落ち込んでいるのは、国家そのものです。欧州の難民問題やイギリスのEU離脱もあり、そもそもの存続が危ぶまれています。中国の不動産バブルの問題、北朝鮮の地政学リスクも一触即発の様相を呈しています。世界中のどこから『大暴落のきっかけ』が現れても不思議ではありません。」(岩田氏)

「いま金融クラッシュが発生したら、簡単にはカバーしきれません。オプション取引こそが、日本人のこれからを救済する投資手段だと確信しています。」(同)

投資はあくまでも自己判断になるが、銘柄選びから売買タイミングなどの、基本的な知識を抑えたい人にはわかりやすい入門書といえるのではないか。

さて、話は変わるが、3年半ぶりに出版をした。タイトルは、『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)になる。私にとっては9冊目の本になるが、社内の理不尽にジェームズ・ボンドが立ち向かう設定にした。ボンドなら社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対峙するかをストーリー仕立てにした。

アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。日頃、お世話になっている著者の方や出版社からのご協力もいただき、私も彼らが精魂込めて手がけた書籍紹介の記事を掲載している。

今回はそうしたなかで、記事や企画が編集者の目に留まり出版の実現にいたった。読者の皆さまへ感謝として報告を申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

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次回は、9月12日(火)夜に開催します。著者セミナー、並びに出版道場へのご関心が高いことから、ご優待キャンペーンとして定額5.000円のところを、今回はキャンペーン価格3,500円でご優待します。お申込みをお待ちしております。
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