次の言葉「漢字」と「ひらがな」どちらがわかりやすい

尾藤 克之

写真は山口氏。SuperWriter講座/上海のスタジオより

先日、久しぶりに後輩のK君と食事をしたところ、「自分はレポートづくりが得意なんです。最近は、外部の評価も高いですよ!」と返事が返ってきた。外部の文章作成講座を受講したようだ。以前は、お世辞にも上手とは言い難いレベルだった。おそらく、かなりの修練を重ねたに違いない。そしてコツを次のように説明してくれた。

「大きなステーキは食べにくいですよね。焼き方にもムラがあります。だったら、最初から小さく切ってあるほうが食べやすいです。文章もこれと同じで、短くメリハリをつけるとで読みやすくなるんですよ」。ちなみに彼は9月から、あるコンサルティング会社のマネージャーに昇進する。そのお祝いの食事会だった。

K君は苦手を克服したが、ビジネスパーソンと話をすると、意外にも文章を書くことを苦手にしている人が多いことに気がつく。今回は、『残念ながら、その文章では伝わりません』 (大和書房)の著者であり、フリーライターとして活動をしている、山口拓朗氏(以下、山口氏)に、文章の書き方について聞いた。

「漢字」or「ひらがな」のどちらを使うのか

文章を構成する時、読者の読みやすさは大きな要素になる。しかし、読者には多種多様の人がいる。ある程度のバランスをとりながらも、多くの人に受け入れられやすい内容に仕上げなくてはいけない。

「文章全体を見てください。余白が少ないと黒っぽい文章になります。余白が多いと白っぽい文章になります。同様に、漢字が多い文章は黒っぽくなり、ひらがなが多い文章は白っぽくなります。白っぽい文章のほうが読みやすいですが、ひらがなが多すぎても幼稚なイメージになりがちです。やはりバランスが大切です。」(山口氏)

「私の肌感覚では、漢字とひらがなの割合は約3 : 7がベターです。漢字とひらがなの使い分けには、名詞や動詞には“漢字”を使い、補助動詞、接続詞、副詞、形式名詞などには“ひらがな”を使う、というセオリーがあります。難しい漢字や熟語を言い換えるのも、漢字の比率を下げるひとつの方法です。」(同)

難しい漢字や熟語を言い換えるとはどのようなことか。

「例えば、『逡巡(しゅんじゅん)』という漢字には、『ぐずぐずする、ためらう』などの意味がありますが、あまり一般的には使用しません。『上司は意思決定に逡巡している』と書かれても、意味が通じない可能性があります。もちろん、やみくもに『漢字→ひらがな』にすればいいわけではありません。」(山口氏)

「文章の目的や、前後の言葉とのつながりなどを意識しなければいけません。参考までに、ひらがなのほうが読みやすい言葉を、10個ほど挙げてみます。」(同)

<ひらがなのほうが読みやすい言葉>
・無理矢理→むりやり
・余りに→あまりに
・予め→あらかじめ
・何時→いつ
・未だ→いまだ
・色々→いろいろ
・時々→ときどき
・度々→たびたび
・概ね→おおむね
・丁度→ちょうど

ここで、例題がある。次ぎに副詞を5つ提示する。ひらがなのほうが読みやすいものを3つ選んでもらいたい。文章の目的や、言葉とのつながりで変わる場合もあるが、一般論として考えていただきたい。答えは記事の最後に記載。

<例題:次ぎの副詞で、ひらがなのほうが読みやすいものを3つ選んでください>
1. 中々(なかなか)
2. 遂に(ついに)
3. 既に(すでに)
4. 必ずや(かならずや)
5. 得て(えて)

「漢字」or「ひらがな」のどちらを使うのか(応用編)

ここでは、「漢字」それとも、「ひらがな」を使うのかについて、応用編を紹介したい。

「『時』という文字があります。『時』は漢字を使わずに『とき』と、ひらがなで書くことがあります。ある特定の時期や時点を示すときは漢字で『時』と書きますが、状況や仮定や条件を示すときは、ひらがなで『とき』と書きます。」(山口氏)

「特定の時期を示す場合には、『時が経過した』『時が解決する』という使い方をします。状況や仮定や条件であれば、『困ったとき』『こんなとき』という使い方をします。いかがですか?意外と簡単ですよね。」(同)

本書は文庫サイズながらも、図解も多く非常にわかりやすいテイストに仕上がっている。さらに、ケースが多いことから、反復学習が可能だ。文章の基本的なスキルを学びたい人にとってはおすすめといえるだろう。

<例題>の回答
正解は、1.中々(なかなか)、2.遂に(ついに)、3.既に(すでに)の3つ。4.は、「必ず」に助詞「や」の付いた語。「必ず」を強めているので漢字を使用する。5.は、下一段活用の動詞「得る」の連用形「得」に接続助詞「て」が付いた形なので漢字を使用する。

さて、話は変わるが、3年半ぶりに出版をした。タイトルは、『007(ダブルオーセブン)に学ぶ仕事術』(同友館)になる。私にとっては9冊目の本になるが、社内の理不尽にジェームズ・ボンドが立ち向かう設定にした。ボンドなら社内の理不尽に対してどのように立ち向かい対峙するかをストーリー仕立てにした。

アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月で、「出版道場」という出版希望者のニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。日頃、お世話になっている著者の方や出版社からのご協力もいただき、私も彼らが精魂込めて手がけた書籍紹介の記事を掲載している。

今回はそうしたなかで、記事や企画が編集者の目に留まり出版の実現にいたった。読者の皆さまへ感謝としてご報告を申し上げたい。

尾藤克之
コラムニスト

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