日本は、なぜ女性が働きやすい社会にならないのか?

田原 総一朗

パネリスト全員が女性で討論(テレビ朝日より:編集部)

先日の「朝まで生テレビ!」は、「戦争と平和」を取り上げた。パネリストは女性だけ。10人が激論したのだ。

議論は、トランプ大統領について、北朝鮮問題、そして核問題など、さまざまなテーマにおよんだ。いずれも建前に終始することはなく、かといって感情的になるでもない。彼女たちのしっかりとした本音の議論は、すばらしく楽しかった。とにかく熱く、濃かった。

たとえば、核の問題。社民党の福島瑞穂さんが持論の核廃絶を述べれば、ノンフィクション作家の河添恵子さんが、「ミサイルがこの瞬間に飛んできたらどうするんですか」と反論をぶつける。すると漫画家の倉田真由美さんは、「よくそう言うけど、ほんとに来るの?」と切り返す。

中国事情に詳しい河添さんは、「北朝鮮より中国の人民解放軍が何をするかわからない」と熱く語る。それに対して、三浦瑠麗さんが、「北朝鮮のような国の敵意を減ずるためにどういう支援をするかなど、めんどくさい平和を創出するためのプロセスがまずあって、その上での核廃絶なんです」と冷静に語り出す。

今回の「朝まで生テレビ!」は、とても有意義だったと思う。番組終盤では、日本における「男女平等」にも話が及んだ。

男女雇用機会均等法の施行は1986年だ。女性活躍推進法が施行されたのは2016年。女性が働きやすい社会へと着実に変わってきているといえよう。

しかし、世界的に見るとまだまだだ。男女平等ランキングでは、日本は111位にすぎない。75位のロシア、99位の中国よりも「平等」ではないとされているのだ。

もっと具体的に見てみよう。上場企業の女性役員の割合だ。日本の女性役員の割合は3.4%。一方、フランスは34.4%なのだ。上場企業の管理職の割合だと、日本は12.5%で、対するフランスは31.7%。国会議員は、日本9.3%、フランス38.8%。いまだ歴然とした差がある。

総務大臣の野田聖子さんに取材したことがある。「総務大臣としての野田聖子と、障害児の母親としての野田聖子、どっちが大事ですか」と野田さんに聞くと、「もちろん母親です」と答えた。「では、閣僚になって忙しくなったから、お子さんが不幸ではないか」と僕が重ねて聞くと、彼女は「不幸にしない、息子といる時間を短くしないようにしている」と言った。だから野田さんは、仕事を早く終えて家族と過ごす時間を持つように、総務省全員に指示しているという。

ところが、番組で僕がこの話をすると、三浦さんに、「男性政治家であれば、障害児がいてもそんな質問はしないですよね?」と切り返された。たしかに、その通りだ。一本取られた。

しかし、言い訳ではないが、もちろん僕も、女性だけが家のことをやればいいと思っているわけではない。女性がちゃんと働けるためには、男も女もみな17時に仕事を終わり、家事をしたり家族と過ごせる、そんな文化が必要だと思っている。

だから、野田さんのような人が大臣になって、まずは総務省職員たちに早く帰るよう促す。こういう流れは、とてもいいことだと僕は思うのだ。いや、むしろこういうところから社会は変わっていくだろう。

「女性に限らず障害者、LGBT、さまざまなバックグラウンドを持った人が出てくるのがいい」と福島さんが話していた。まったくその通りだ。社会の中で少数派とされる人たちが、実際に活躍することが大事なのだ。それは日本の社会を豊かに、柔軟に、変えていくにちがいない。

そんな思いを新たにしたのが、今回で365回目になる「朝まで生テレビ!」であった。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年9月4日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。