フィッシャーFRB副議長、9月FOMC直前に辞任表明

6日深夜、ベッドに潜り込もうとした瞬間にそのアラートが鳴った。

目を疑いましたね~。フィッシャーFRB副議長(73歳)がまさかこのタイミングで辞任を発表するとは!FRB副議長としての任期は2018年6月12日まで(理事としては2020年1月末)であり、何より資産圧縮の決定が見込まれる9月19~20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前にした時期に発表するなんて、完全に予想外でした。

銀行監督担当の副議長に指名されたランダル・クオールズ氏は未だ米上院での承認段階でFOMC入りの目途すら立っていないにも関わらず、なぜ今FOMCから去る決意を固めたのか。トランプ米大統領に宛てた書簡では、「一身上の都合(personal reasons)」と記されてあったといいます。

金融危機直後はイスラエル中銀総裁として辣腕を鳴らし、世界各国の金融政策担当者やエコノミストから尊敬を集めるフィッシャーFRB副議長の辞任の時期は、10月13日頃となる予定です。

フィッシャーFRB副議長は中道タカ派寄りとされてきたため、バークレイズのマイケル・ゲイピン米主席エコノミストは「フィッシャーFRB副議長の辞任は、12月利上げ見通しの可能性をわずかながら後退させた」とのコメントを寄せていました。JPモルガンのマイケル・フェローリ米主席エコノミストも、金融政策は基本的に経済指標次第と断わりつつ「12月利上げの確率は若干低下した」と指摘。また、フェローリ氏は「従来、辞任前のFOMCではドットチャートを公表しない傾向がある」と付け加えます。

エコノミストが12月利上げの可能性に慎重となりかねないもう一つの理由として、FOMCでの金融政策決定では理事より地区連銀総裁の存在感が高まる可能性が挙げられます。現在、投票権を有するメンバーは、以下の通り。


(作成:My Big Apple NY)

足元でブレイナードFRB理事のほか地区連銀総裁メンバーはセントルイス地区連銀総裁、ミネアポリス地区連銀総裁、ダラス地区連銀総裁と低インフレ環境下での利上げに慎重な姿勢を表明していますよね。さらにシカゴ地区連銀総裁はもともとハト派寄りですし、利上げに前向きになるとは考えにくい。市場関係者も経済指標やこうした流れを受け12月利上げに懐疑的で、FF先物市場の利上げ織り込み度は35%付近で低迷しています。

さて、フィッシャーFRB副議長の離任で、FRBの空席はクオールズ氏の分を除き3つとなりました。トランプ米大統領が指名できる人数が増えただけに、着任者次第で金融政策はこれまでの合議制から機械的な運営に移行へ向けた議論が高まる余地を残します。

(カバー写真:International Monetary Fund/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2017年9月7日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。