世界大学ランキングに見る沈み行く日本

中村 祐輔

シカゴはすでに日本の晩秋のような気候で、昨朝の最低気温は10度まで下がった。1泊2日のサンディエゴ出張でクタクタになった重い体で、急に冷え込んだ中を歩くのは結構つらいものがある。しかし、少し、色づき始めた木々のなかを歩くのは爽やかなもので、歩き進む中で少しずつ正気を取り戻したような気がした。

そして、話は変わるが、Times Higher Educationが2018年版の世界大学ランキングを公表した。

1.オックスフォード大学

2.ケンブリッジ大学

3.カリフォルニア工科大学

3.スタンフォード大学

5.マサチューセッツ工科大学

6.ハーバード大学

7.プリンストン大学

8.インペリアルカレッジ・ロンドン

9.シカゴ大学

10.スイス連邦工科大学・チューリッヒ校

10.ペンシルベニア大学

と続く。イギリスに甘いのは、これをまとめたのがイギリスの機関であるから仕方がない。日本での認知度は低いが、シカゴ大学が依然としてトップ10に入っているのは喜ばしいことだ。

アジアで見ると

22.国立シンガポール大学

27.北京大学

30.精華大学

40.香港大学

44.香港科学工科大学

46.東京大学

と、この順位まで日本の大学はでてこない。ようやく、東京大学は、世界で46位になっただけでなく、アジアの大学の序列でも6位に沈んだ。シンガポール大学や北京大学の背中が遠くなって行く。京都大学は74位だ。日の丸主義の私には、悲しく、そして悔しい。このようなデータが出るたびに、日本の大学に不利な基準だと言い訳をする人たちがいるが、国際競争力をつけるためには、国際的な基準で闘う準備をするのは当然だ。柔道でも国際化によって不利な状況に陥ったが、国際的な場で決められたルールの中で競争できるようにすべきなのだ。

しかし、米国から眺めると、良くも悪くも中国の国際的な存在感は格段と高まっているのが現実だ。大学の競争力を高めるためには、エリート教育が不可欠だが、上辺だけの平等主義がまかり通る日本では、エリート育成というだけで、反発する声が上がってきそうだ。日本国内の甘い教育と大学内における国際化の欠如は、日本という国のボディーブローのように効いてきているが、その現実を認識できない、あるいは、目を逸らしてきたツケが回ってきているのだと思えてならない。まあ、「面従腹背」を是とするようなトップがいたような文化だから仕方がないと思うが、やはり、日本の存在感の低下は悔しい。

この体たらくの根源は、評価制度の甘さに尽きると思う。前任者や仲間を批判するのを避けて甘い評価を繰り返してきた結果として、日本という国の根っこが腐りかえっているのだ。何が問題なのか、何がかけているのか、それを直視しない限り、10年後には日本の大学はランキングから姿を消してしまうだろう。

北朝鮮を含めた国際問題、医療保障制度、教育制度、大きな問題を抱えながらも、肝心な議論が行われない国会。そして、民進党の代表が代った途端、幹事長候補は不倫問題で沈没。天に吐いたつばが、ブーメランのように跳ね返ってくるのは、もはや喜劇でしかない。もちろん、われわれには悲劇だ。


編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2017年9月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。