元記者と元官僚が激白!大手メディアの裏側を読む方法

尾藤 克之

写真は参考書籍書影

横浜市に住む、鈴木さんは(仮名)、夫婦と子供2人の4人家族。長男(一郎)は大学2年生で就職活動を控えている。第一志望はマスコミで新聞社を志望している。父親は大学でメディア論の教鞭をとっている。一郎は、就職活動をするにあたり、父親に各新聞社の特徴を聞いてみることにした。以下は、その時の会話になる。

さて、今回、取上げるのは、『朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)になる。アゴラ編集長の新田哲史/氏、同フェローの宇佐美典也/氏の共著により執筆された。

メディアの特性を理解しているか

--ここから--
<一郎>
まず最初に、読売新聞について教えてよ。

<父親>
読売新聞は、世界一の発行部数を誇りギネスにも登録されているんだ。路線は、保守系だけど中道かな。大衆紙なので「わかりやすさ」に重点が置かれる。だから、中道的な記事が多くなるんだ。人々の関心が寄せられやすい構成には特徴があるね。主筆の渡邊恒雄さんは自民党支持者だからいまでも影響力があるそうだよ

<一郎>
そうなんだ!朝日新聞はどんな感じなの。他の新聞社の特徴は?

<父親>
朝日新聞は読売新聞とは対極にあるね。全国高校野球選手権大会の主催なので、一般的にはいいイメージをもたれている。思想はリベラルだけど、最近では偏向報道が多いという噂があるね。毎日新聞も同じ路線で革新的だけど朝日新聞ほどの影響力はないから中途半端な印象だね。

産経新聞は部数こそ多くないけど保守本流の路線だね。例えば、読売新聞は自民党批判をしない。でも、産経新聞は間違っていると思えば自民党にも遠慮はしない。それだけ信念があるからなんだろね。最近では稲田元防衛相を追及した記事が話題になった。発行部数は読売新聞の1/10くらいだけど存在感はある新聞社といえるね。

<一郎>
へえー。そう考えると、それぞれの新聞社の主張や特徴を知る事で、何を伝えたいのか、どのような世の中を望んでいるのか見えてくるようだね。
--ここまで--

これはあくまでもフィクションとして、わかりやすい新聞社の事例を出した。皆さまはメディアの名前を聞いてその特徴を説明することができるだろうか。恐らく、わからない人のほうが大勢ではないかと思う。現実的な問題として、メディアが発信する情報をすぐに信じてしまう情報弱者は非常に多い。

以前であれば、テレビや新聞の情報は信頼性があるとされていた。特に、大きなメディアが発信する情報であれば、いやおう無くそれを信じてしまい正しい情報を把握していると勘違いしていた。しかし、最近では大手メディアであっても、フェイクにだまされることもあり、ソースの怪しいネット情報に翻弄されることもある。

情報のなかでも、政治ネタは高度化された印象操作やフェイクの温床であり、有権者が世論ゲームに翻弄される危険性がある。いまは、様々な情報が乱立するなかで、正しい情報を見分けるリテラシーが求められているのである。さて、本書のタイトルからは朝日新聞を糾弾するかのようなイメージを持たれた方もいるのではないか。

朝日新聞と反権力ごっこの終焉

本書は、朝日新聞への応援歌である。朝日新聞という存在のとらえ方にもよるが、とりわけ、安倍政権の足を引っ張ろうとする動きがあり、そこには、朝日新聞の存在が見え隠れするという視点で考察している。各国のメディアを見れば、権力に対する抑止機能を標榜しているところは少なくない。

よって、朝日新聞のスタンスが一概に間違っているとはいえない。しかし、ファクトの積み上げでは無く、強引にストーリーを作成し、そこに当てはめようとする姿勢があると指摘する。ストーリーに記事をあてはめるという流れになるので、これは、事実を報道する姿勢が欠如していることに他ならない。

メディアには、社会の中で発生している事象を精査し、体系的に取りまとめる役割が求められる。過去のように報道によって世論を扇動し、一般市民を啓蒙する手法は通じない。事実、新聞を読まない人が増加して、ネットニュースで済まそうと考えている人が増えていることは、その傾向を如実にあらわしているといえよう。

多くの人がそうかも知れないが、日本ではニュースサイトの6割のシェアを占める、Yahoo!ニュースから情報を拾い、興味のある話題を各メディアがどのように報じているのかを確認する流れができつつある。事実、Yahoo!ニュースでは、各新聞社の記事を転載して掲載していることから、必要な情報はすべて入手することが可能である。

本書は「時代に取り残された朝日新聞の再生こそが、リベラルの再生に繋がり、引いては保守の再生にも繋がる」と結ばれている。これが本書の核心部分になる。メディアに期待されるものは変化している。フェイクな反権力ごっこに付き合う余裕はない。

アゴラ3000万PVのノウハウを凝縮

本書は政治に詳しくない人でも読み解ける内容に仕上がっている。個人的には、蓮舫氏の二重国籍問題で翻弄された民進党の流れは興味深い。しかし、民進党はいきなり党人事でつまづき、辻元氏を代表代行に起用するなどセンスは素晴らしかった。森友学園横の「野田中央公園」の用地取得の問題が、今後どのように展開するのか興味深いところである。

さて、少々話は変わるが、アゴラの昨年同時期のアクセス数(月間)は、単体で300万PV、Yahoo!ニュース等への配信分も含めても全体で700万PVほどだった。それを新田氏が編集長就任以降は、1年を経ず、単体1000万PV、全体3000万PVを実現している。

政治や、ネットメディアに関わる方には特に参考になるだろう。最近の施策や流れが把握できるのだから、これ以上の教材はない。この機会に手に取ってもらいたい。

参考書籍
朝日新聞がなくなる日 – “反権力ごっこ”とフェイクニュース』(ワニブックス)
新田哲史(著)、宇佐美典也(著)

尾藤克之
コラムニスト

約3年半ぶりに出版をした。タイトルは『007に学ぶ仕事術』。アゴラでは、「ビジネス著者養成セミナー」という著者希望者のためのセミナーを隔月、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。

私は、著者や出版社から献本されたなかで、ニュースとして相応しいものを紹介記事として掲載している。今回はそうしたなかで、記事が編集者の目に留まり出版にいたった。読者の皆さまへ感謝としてご報告を申し上げたい。

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