アサイーベリーで視力回復!というサプリ販売者のウソ

アサイーを使った食品は人気だが…(写真AC:編集部)

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

あなたは視力低下に頭を悩ませていないでしょうか?「この間メガネを変えたばかりなのに、また遠くのものが見えなくなってきた…」という具合に視力の低下が続いていくと「いつか全盲になってしまうのではないか?」という強烈な不安が湧き上がってきますよね?

私は初めてメガネを作ったのは中学生の時でした。メガネを作ったものの、「メガネは必要な時だけつけるようにして、常時かけ続けないようにしよう!」と固く心に誓いました。というのもクラスメイトにメガネをかけた子がいまして「あいつメガネマンだよな」と嘲笑の的になっていたことに恐怖を感じていたのです。どうしても見えない時だけメガネをつけるライフスタイルでしたが、視力低下は止まりません。遠くのものを見る時は眉間にシワを寄せて目を細め、大学のキャンパスを歩いて友人から手を振られても気付かず…。とうとう、就職を機に裸眼を諦めざるを得なくなり、完全なるメガネマンになってしまいました。

でも不思議ですね。常時メガネをつけるようになってからは、ずっと続いていた視力の低下がピタリと止まりました!おそらく、目の負担が軽減したのでしょう。無理に裸眼を続けていた時のほうが目を酷使していたのかもしれません…。

さて、そんな視力低下に悩むあなたや私にとって「飲むだけで、食べるだけで視力回復!」といわれたらどうでしょうか?それは視力が低下する一方の人にとって、これほどの朗報はありませんよね。「目が良くなる」というのは視力が悪い人にとってはファンタジーであり、まさに夢のような話です。

そして視力回復に羨望の眼差しを向ける、私たちを魅了してやまないのが「アントシアニン」というキーワードです。…でもですね、このアントシアニンという言葉をあまり感心しない使われ方をしているケースを見ることがあります。

アサイーのアントシアニンはブルーベリーの5倍!

さて、産経新聞社が運営するzakzakというサイトの記事にアサイーベリーがどんなフルーツなのか?という紹介がされています。

” アサイーベリーは、赤道直下の強い直射日光が照りつけるブラジル・アマゾン原産の果実です。目にいい成分といえばポリフェノールの一種のアントシアニン。アサイーベリーはその含有量が群を抜いています

引用元:【サプリで認知症予防&健康長寿】奇跡のフルーツ!優れた抗酸化力で疲れ目改善「アサイーベリー」

このようにアサイーベリーの特徴は「アントシアニンの含有量がとにかく多い!」ということです。

アントシアニンの含有量は数字で表す事ができるので、その事実に偽りはないでしょう。次の数字を見てください。

果物100gあたりのアントシアニンの含有量

アサイー  …414mg

ブルーベリ-… 89mg

アサイーベリーには、目にいいとされるブルーベリーの5ものアントシアニンが含まれています!

アサイーベリーのサプリメントを買う前に冷静に

アサイーベリーに興味を持って、ネットで検索してみると、あちこちでサプリメントを売られまくっています。アサイーベリーサプリの購入者が「アサイーベリーサプリメント買ってみた!これで視力回復するかな!?」とコメントしてあって、期待に胸を膨らませまくっている様子が書かれています。それまでアマゾンの奥地にあったアサイーベリーが、はるばる日本に運ばれてサプリメントになっているのは、メディアが取り上げて一気に広がったのでしょう。

ですがその貴重なお金を財布から出してしまう前に冷静になりましょう!「本当にアサイーベリーを買って、その値段分の価値があるかどうか?」と考えてもらいたいわけです。もしもあなたが「自分はアサイーベリーがおいしいから、あの味を楽しみたくて買って食べるんだ!」と考えているなら私は何もいいません。ぜひ買っておいしく食べてみてください(私も大好きです)。しかし、「飲むだけで簡単に視力回復できるから」ということでアサイーベリーでらくらく視力回復ができるからと、サプリメントをせっせと買おうというなら買う前に冷静になりましょう。

飲むだけで視力回復…そんな魔法はありません

視力低下の原因って一つだけじゃないんですよね。栄養不足、目の筋力低下、老化現象など様々あります。

あなたの感じている視力低下の原因が「栄養不足」だというなら、アサイーベリーを食べる、飲むことで効果は得られると思います!ちなみに視力低下の要因にはビタミンA・B・E、アントシアニン、亜鉛などの不足があげられます。「自分はその他の栄養や、眼球運動量は足りているし目の老化もない。唯一、アントシアニンだけが不足しているから、これを補給すれば視力回復する!」とそう思うならぜひアサイーベリーを摂取しましょう!なんといっても不足している栄養素を補給するわけですから、当然すぐに結果も出ることでしょう。

でもその視力低下の原因がアントシアニンではなく、亜鉛不足だったら?ビタミン不足だったら?アントシアニンをたくさん取って視力回復するでしょうか?その場合はいくらアントシアニンだけをせっせと補給しても意味がありません。「これを飲むだけでたちまち視力回復する!」そんな魔法はありません。

視力低下の原因は複合的

先ほどお話したとおり、視力低下の原因は一つではなく複合的です。その原因の一つに「筋肉の固定化」というものがあげられます。簡単にいうと目の筋力低下だと思って下さい。

この目の筋力低下が視力低下の原因の場合は、アサイーベリー飲んで治ることはありません。「PCやスマホの使い過ぎで視力低下」とチラシなどには書かれていますが、それは近くで液晶モニターを凝視し続けることで、近距離で目の筋肉が固定化されてしまい、いざ遠くのものを見る時にピントを合わせることができなくなり、ぼやけてしまうからといわれています。ですからやたらにアントシアニンだけを大量補給したところで、そもそも遠くを見るためのピントを合せる力が不足していては無理というお話です。

これは筋トレを考えてみれば簡単に分かる話です。「かっこよく筋肉をつけたい!」と思ってプロテインだけをガバガバ飲みまくって、ボディービルダーのような体になるわけがありません。運動やトレーニングをすることで筋肉が大きくなり、その時に必要な栄養素をプロテインから摂取するからこそ、かっこいい筋肉がつくわけです。運動をせず、ただ飲むだけで筋肉ムキムキになり、力が強くなるのは怪しげな薬剤だけです。

筋肉についていえば「そりゃ当たり前でしょ!運動しないと体は強くならないよ!」と誰もが理解できると思います。でもなぜか視力についてはどこか神格化しているというか、飲むだけで回復する、と特別なもののように思っている人が多いと思います。でも目も筋肉を使って動かしているものですから、視力回復をするには栄養補給と目の筋力アップの両方が必要なのは筋肉をつける話と何ら変わりません。アサイーベリーを紹介しているブログなどでは「アサイーベリーは飲むだけで視力回復する」みたいに書いていますがこれでは誤解を生んでしまいます。正しくは「アントシアニン不足による視力低下に歯止めをかけられるフルーツ!」というのが正しい表現です。

今回の視力回復に限らず、何事もそうですが物事の原因はたいてい一つではなく、複合的であることがほとんどです。原因を一つずつ理解し、それに必要な対応策を冷静に見て貴重なお金は効果的なものに使う方がスマートな買い物ではないでしょうか!?参考になれば幸いです。

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。