医師、弁護士、公認会計士、司法書士・・・等々の国家資格は、一度取得すると(剥奪されない限り)一生涯有効な資格です。
しかし、昨今は技術進歩と共に社会制度も、従来では考えられないスピードで変化しています。
このような時代に「一生ものの資格」が存在していいのかどうか大いに疑問を覚えています。
法曹界では、旧試験合格者が新制度合格者を見下す風潮がありますが、旧試験合格者の中にもとんでもない有資格者がたくさんいます。
法廷で自分が書いた訴状の訴訟物を答えられなかったり、主張立証責任のルールを知らずに怒り出す弁護士。
記録をまったく読まずにトンチンカンな被告人質問をする刑事法廷の裁判長。
民法の基本知識すら忘れた検察官・・・等々。
私の知人の内科医は、自身が眼科や耳鼻科という開業医にかかるとき「必ず若い医師にかかる」と言っていました。出身大学でも経歴でもなく若い医師を選ぶのは、最新の知識に近いからだそうです。
裏を返せば、いかな有名大学医学部出身者であっても、開業すると全く勉強しなくなる医師がとても多いのです。先の弁護士たちと同じです。
普通に国家試験に合格した有資格者にしてこの有様なのです。
その上、弁護士や税理士などには、試験に合格していない”裏口資格者”がいるのです。
一定期間、国会議員、簡裁判事、内閣法制局惨事、大学教員をやっていると認定等を経て弁護士資格を得ることができ、税理士に至っては二種類の大学院卒の裏口だけでなく税務署勤務年数という裏口があります。
余談ながら、裏口弁護士か否かは「法曹期別名簿」に名前が掲載されているか否かを調べればすぐわかります。
弁護士人口は増えたものの、弁護士のクオリティーを確認する指標は全く存在しません。
政治家諸氏が刑事事件で元大物ヤメ検弁護士(元検事長とか元最高検部長とか)を雇うことがよくありますが、このチョイスは大間違いです。
検事は昇進すると管理職になり実務から遠ざかります。
「裁判官は年をとっても事件記録と格闘しなきゃいけないんだぞ」というのが修習生に対する勧誘で検事がよく用いる台詞ですが、裏を返せば年をとった上層部は実務からすっかり離れてしまうのです。
経歴だけのヤメ検弁護士をずらりと並べて大失敗をしたのが、故田中角栄元首相だそうです。
私は弁護士なので法曹界のことしかわかりませんが、五年に一回くらい基本三科目(憲法、民法、刑法)の択一試験を実施してみてはいかがでしょう?
数回チャレンジしても合格点に達しなければ、資格剥奪もやむを得ないと考えます。
合格点は当初の司法試験レベルよりかなり下がると予想されるので、それほど厳しいハードルにはならないでしょう。
普段から真面目にやっていれば大丈夫…なはずです(汗)
医師、薬剤師、歯科医師等々、命や身体に関わる職業の場合は、一定水準以上のクオリティーを保つ必要性がより一層高まります。大学の医学部や歯学部は寄付金という名目の裏口入学が横行しているのでなおさらでしょう。
人生百年時代と言われていますが、百年前の知識しか持たない専門家が横行したのでは大変なことになってしまいます(笑)。AIが普及するまでのつなぎになる可能性もありますが、専門家過誤被害を防止する意味でも真剣に検討すべき課題ではないでしょうか?
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年9月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。