カタール:危機解決に国民会議?

シェイク・アブドラ議長(arab newsより引用:編集部)

6月5日に始まった危機後、初めてカタールのタミム首長は外遊に出た。トルコ、ドイツ、フランスで首脳会談を行い、その後国連総会に出席すべくアメリカに飛んだ。総会中にはトランプ大統領との会談も予定されているとする報道もある。

そんな中、中東通の方が「大丈夫?」と呟くニュースが流れている。
Arab Newsがジェッダ発として「カタールのシェイクが危機解決のための国民会議を呼びかけている」というニュースを報じているのだ(”Qatari Sheikh calls for national meeting to end crisis”)。

中東通の方は、首長不在中の「クーデター」を心配しているのだろう。
だが、これって論理矛盾ではないだろうか?

サウジなど四カ国は、カタールがテロリストを支援している、イランと通じている、ムスリム同砲団を援助している、近隣諸国の内政干渉をしていることなどに怒って、国交断絶、交通・通商遮断の挙に出たのだ。また、カタール政府批判以外はほぼ自由な報道で知られる衛星放送局「アルジャジーラ」の閉鎖も要求している。
だが、事の本質はサウジなどの「現行の統治体制への反逆、あるいはその萌芽は許さない」ということだと筆者は判断している。豊富な天然ガスにより裕福な国家に変貌したカタールが行っているのは、まさに「現行の統治体制への反逆、あるいはその萌芽」を助長することだ、勝手なことをするな、という訳だ。

冷静に考えると、シェイクが呼びかけているのは、国家の大事なことを「国民が決めよう」ということ。それは、まさに「現行の統治体制への反逆」あるいは「その萌芽」を助長することではないのだろうか。

いつもながらのアドバルーンにすぎないのだろうか。
あるいは、「クーデター」の前触れなのだろうか。

記事の要点は次のようなものだ。念のため、紹介しておこう。

・カタールの王族の一人、シェイク・アブドゥッラ・ビン・アルターニーは、近隣諸国との問題解決のために「平和の伝道者」になろうと、カタール国民に呼びかけた。「家族、子供たち、ビジネスマン、そして全てのカタール国民よ。知恵と平和の伝道者になろう。人々の心と心をつなごう」

・シェイク・アブドゥッラは、事態がどんどん悪化していくのを見ることに胸を痛めているとし、「もはや黙ってはいられない」危機を討議するため、カタールの国民レベルの会合を呼びかけた。

・6月に始まった今回の危機は日々悪化しており、「望んでいない運命に我々を押しやっている」とシェイク・アブドゥッラは語った。

・シェイクは、サウジのサルマン国王はカタールとカタール国民の安全を約束している、と語り、カタール国民に、自分と連絡を取って国民会議の日程を決めよう、と呼びかけた。


編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年9月18日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。