電気自動車は日本メーカーの「最終決戦」

ビジネスの世界ではよく「革命」という言葉が使われるが、業界を大転換させる劇的な変化は、そうしょっちゅうあるものではない。1980年代にPC革命、90年代にはインターネット革命が起こったが、2000年代のスマートフォンは革命とはいえない。そのあとIT産業には、大きなブレイクスルーは起こっていない。

次に革命が起こる業界として、世界が注目しているのは自動車である。製造業のあらゆる分野がデジタル化される中で、自動車だけは内燃機関という100年前のアナログ技術のままだ。それに代わる技術もたくさん出てきたが、いま電気自動車(EV)が内燃機関に挑戦している。それはPCやインターネットのような革命を起こせるだろうか。

日本のIT産業はなぜ敗退したのか

今のEVは、IBM-PCの出てくる前のPCのようなものだ。1980年ごろPCはゲーム以外に使い道がなく、大人の使う機械ではなかった。日本の会社では「オフコン」や「ワープロ」を使っていた。コンピュータ業界の利益の7割を上げていたのはIBMだった。

当時の最先端技術は人工知能(AI)だった。世界の業界の人々が「大型コンピュータの次はAIだ」と思い、日本の通産省は「第5世代コンピュータ」プロジェクトに1000億円の国費を投じるとぶち上げた。

IBMは日本の大型機メーカーを敵視し、IBM用のソフトウエアを使える「互換機」を駆逐しようとした。彼らの政治力は強かったので、1982年には日立と三菱の社員をおとり捜査で逮捕させる「IBM産業スパイ事件」を起こし、巨額の賠償金を取った。

他方でIBMはPC互換機を放置したので、インテルのCPU(中央演算装置)とマイクロソフトのシステムを搭載すれば、PCは誰でも組み立てられるプラモデルのようなものになった。80年代にアジアから安価な互換機が大量に輸入され、PCの価格は劇的に下がった。

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