医学部を目指す親子が学ぶべき勉強法!これで合格?

写真はイメージを伝えるために書籍より引用。

秋の夜長をいかにお過ごしだろうか。今回は、『[完全版]超ファイルの技術』を紹介したい。本書は、移植外科医の勉強術になる。医師を志し医大に入学して、さらに、移植外科医になるまでの勉強術であれば、聞きたいと思わないだろうか。それほど難しい手法ではない。一般的に知られている手法を組み合わせたもので汎用性も高い。

著者は刑部恒男(以下、刑部医師)。簡単にプロフィールを紹介する。北里大学医学部卒。相模台病院外科医長、江東区あそか病院外科医長を経て、臓器移植研究を目的に米国ピッツバーグ大学病院に留学。臓器移植外科を専門とし北里大学医学部外科講師を勤めた。富山県高岡市に「トモエクリニック」を開設し院長。医学博士。

目標を言語化することの効果

刑部医師によれば、本書で推奨しているシステムは、「I Canリフィル」「人生年表」「スケジュール表」「なんでもリスト」「項目別リフィル」の5つから構成されている。そのなかで最も重要なのが「I Canリフィル」になる。これは目標やなりたい自分を言語化し実践するもので、「アファーメーション」に似ている手法である。

たかが言葉、されど言葉の力。実際に、「I Canリフィル」を読み返し、成し遂げている自分のイメージを描き、「私はできる」と確信することで刷り込むことができる。刑部医師は、手塚治虫の「ブラックジャック」にあこがれてアメリカ留学をし、移植外科医をとして活動する自分を早くからイメージしていたことになる。

目標を言語化することの効果は誰もが経験している。高校球児が「甲子園出場」と書くことや、受験生が「東大合格」のハチマキをするのも同じ意味だ。会社員が、MBOシートで目標を設定し振り返ることも同じようなことかも知れない。そう考えれば、私たちは目標を言語化する作業をかなり幼い頃から常習していることになる。

「I Canリフィル」が目標を示しているなら、「人生年表」が人生の地図になり、スケジュールを書き込む役割を担う。つまり、計画に具体的な時期を示すのが「人生年表」ということになる。「夢に日付をいれる」なんてことも同じような意味かもしれない。事実、刑部医師は書籍内で次のようにも述べている。紹介したい。

「医学博士になると大学研究員の道が開け、臓器移植研究に専念することが大学講師への道につながっていった。海外留学の夢も、大学病院で『新医療技術導入機構,海外派遣制度』が企画され、米国ピッツバーグ大学病院への臓器移植外科留学のチャンスが巡ってきた。チャンスが向こうから飛び込んできたのである。」(刑部医師)

本書の質感についても触れたい。テイストは、医師が書いた本と聞くと文字だらけの黒っぽいページを想像する人が多いと思うが、キャプチャー写真のようなイラストが効果的に使用されている。言葉も平易であることから読みにくさは感じない。

書き込み方などは、次のように紹介されている。「スケジュール表」は、個人の事情に合わせて変える。これはシステム手帳でいう、年間、月間、週間、日々の予定をすべてを、月間カレンダー型のリフィルですませていることと同じである。カレンダー型だと、1カ月間の大きな予定が頭の中で図解的に描けるからチェックが容易になる。

自信過剰と働きすぎには注意

勉強といえば、海外にも興味深い事例が存在する。拙著『007に学ぶ仕事術(同友館)』でも触れているが、主人公のジェームズ・ボンドはパブリック・スクール、イートン校を中退し、フェティックス校に裏口入学、最後はオクスフォード大学を卒業している。ボンドは勉強好きで「007リビング・デイライツ」には、図書館で勉強しているシーンが存在する。

現在、イギリスのカーディフ大学には変わったコースが用意されている。BBCによれば「ジェームズ・ボンドについて勉強するカリキュラム」が存在する。コースではジェームス・ボンドについて書かれた小説や映画を勉強する。実際の就職活動の際に、どれくらいのメリットがあるかはわからないが興味深いカリキュラムといえる。

さて、話を元に戻そう。刑部医師は、自信過剰と働きすぎに留意すべきとしている。仕事のやり過ぎとストレスで、数年前に突然、右目は網膜剥離に襲われた。失明の一歩手前でのレーザー治療だった。昼間は電子カルテの画面を見続け、夜はパソコン画面に向かって著作活動を続けて目を酷使していたようだ。

皆さまは「患者」の意味をご存知だろうか。患者の「患」の字は、「口」に串が刺さって心が閉ざされている状態である。医者はその串を抜いてあげることが仕事だ。患者さんの閉ざした心の串を抜いてあげられように、心に寄り添った手当が医師にとってもっとも大切なことだと述べている。最後に刑部医師の言葉として紹介していおきたい。

そういえば、数年前、学年ビリのギャルが1年で偏差値を40アップして名門大学に入学する書籍がヒットしたことがある。賛否両論あったが、少なくも私にはそれらのものより、実務的に役立つものとして本書を読み記事を書いている。ファイリングを仕事術ではなく、大学受験のための勉強法の一つとして考えると異なる側面が見えてくる。

[完全版]超ファイルの技術』(すばる舎)

尾藤克之
コラムニスト

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