安倍首相が衆議院の解散・総選挙を発表しました。北朝鮮の「有事」にそなえるというのはいいと思いますが、選挙のおみやげに「消費増税の半分を教育費にまわす」と決めたのは、ちょっとややこしいですね。よい子のみなさんにもわかるように解説しましょう。
2019年4月に消費税率を8%から10%に上げると、税収は毎年5兆円ふえます。このうち2012年の三党合意では80%(4兆円)を借金の返済にあてることになっていましたが、きのうの話では、そこから2兆円を「教育無償化」にまわすことにし、借金の返済には2兆円しか使わないことになりました。
これは増税のうち2兆円を先送りするのと同じですが、なんのためにこんなややこしいことするのかわかりませんね。この程度の財源では大学無償化もできないし、景気対策にもなりません。安倍さんは増税を2回も延期したので、さすがに3回目はまずいと思ったんでしょう。
この点では東京都の小池知事のように「増税はやめる」といったほうがわかりやすいと思います。これはかしこいですね。お母さんは税金といえば消費税しか知らないので、税金を安くしてくれる党に投票するからです。でも消費税ってそんなに高いんでしょうか?
次の図は、国全体の社会保障給付と負担の比較です。こまかい数字を無視してざっくりいうと、給付118兆円に対して保険料は66兆円しかなく、残りの45兆円を税金で穴埋めしています。この財源のうち17.2兆円(地方分を合わせると22.1兆円)が消費税ですが、これを10%(27兆円)にしても穴はまったく埋まりません。
その差はとりあえず国債(国の借金)で埋めるわけですが、今回の先送りで毎年2兆円、借金が増えることになります。その分みなさんの世代の負担が増えます。ちょっとややこしいですが、この金額を見てください。
お母さんの払う消費税は22兆円ですが、お父さんが給料で天引きされる保険料は66兆円と、その3倍以上あるのです。しかも赤字はどんどん広がっていくので、お母さんが税金を払わないぶん借金が増え、みなさんがその何倍も払うことになります。保険料は上がり、それでも足りない穴を埋めるために、消費税率は10%どころか、30%ぐらいになるでしょう。
安倍さんも小池さんもそれを知っていますが、お母さんが消費税をいやがるので、見えない税金である保険料にすりかえているのです。日本では「大きな政府」をめざす安倍さんと「将来もっと大きな政府」をめざす小池さんという対立しかありません。それは政治家にとってはしょうがないのですが、本当は30年ぐらい前にアメリカで出てきた「小さな政府」をめざす政党が必要だと思います。