過保護で「思考停止する」日本の預金者・投資家

金融庁が、外国為替証拠金取引(FX)の証拠金倍率(レバレッジ)を現状の最大25倍から10倍程度に下げる方向で検討を始めたと報じられています(写真は取引画面イメージです)。

現状の最高レバレッジ25倍の場合、外貨の買いポジションを作って、1%円高になれば25%の証拠金が無くなります。4%円高力になれな、証拠金が全部なくなってしまう計算。この状態でポジションを持ち続けるのはリスクの取り過ぎです。

私も10年以上FX取引を行っていますが、その目的は外貨資産へのアセットロケーションと、将来の海外不動産購入時のための資金の準備です。レバレッジは5倍前後を維持するようにして、評価損益がマイナスになったらリスク量を落とす(レバレッジを下げる)ようにしています。

今回の金融庁のレバレッジの見直しは、急激な相場変動によって投資家が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていると判断したからとされています。

しかし、FXには株式の信用取引のような「追証」はありません。証拠金の金額が無くなってしまう前に、自動的に強制ロスカットというシステムが作動して、ポジションを解消してしまう仕組みがあります。2年前のスイスフラン騒動(スイ銀ショック)のような、突発的な為替政策の変更のような事態を想定しているのかもしれませんが、レバレッジ10倍でも同じことが起こります。

本件に限らず、日本の個人に対する金融規制は、「過保護」ではないかと思います。

銀行のATMにお金を引き出しに行くと、画面には「振り込み詐欺ではありませんか?」と毎回最初に画面が出てきます。そして、ATMの現金引き出しの上限は一日50万円。50万円を超える現金支払いする場合は、伝票記入して、銀行窓口まで行かなければなりません。現金詐欺などを想定しているのだと思いますが、結構不便です。

あるいは、来年から始まる積立NISAも、金融庁が基準を作りそれに沿った投資信託だけが対象になるとされています。投資初心者を取り込むことが目的なので、このように商品選択まである程度サポートしようという考えなのでしょうが、これでは投資家が思考停止してしまい、いつまで経っても成長しません。

投資家保護、利用書保護という名のもとに、規制がどんどん強化され、利便性が犠牲になっていく。一律に規制によって保護するのではなく、預金者や投資家の自分で考える姿勢を後押しする。子供扱いして規制するだけではなく「教育・啓蒙」も並行して行わなければなりません。

日本の金融市場がますます窮屈になって、いつまでも投資家が成長しない未熟なマーケットになっていくことを懸念しています。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年9月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。