ラスベガス銃乱射事件は何故起きたのか?

田中 紀子

ADTeasdale/flickr:編集部

世界を震撼とさせている「ラスベガス銃乱射事件」。
現在までに死者59名、負傷者500名以上が確認され、アメリカの銃乱射事件の中でも史上最悪という大惨事となりました。

この事件、ISが犯行声明を出すも、FBIは関係を否定。
どうやら政治信条的が動機ではないようです。

そして現在、最有力となっている動機が、カジノへののめり込み。
容疑者は自分を「プロのギャンブラー」「カジノ専門職」と称し、カジノに頻繁に出入りをしていたようです。

ラスベガス震撼、史上最悪乱射殺人犯の正体(東洋経済オンライン)

事件の数日前も連日、「カジノに入り浸り、数万ドルを失っていた」との報道がありましたが、容疑者はもともと裕福であったようなので、カジノの負けが、財産を失うほどのものだったのかどうかはまだ不明です。

アングル:ラスベガス乱射の容疑者、裕福なギャンブル愛好家(REUTERS)

犯人が亡くなってしまった今となっては、真相がつきとめられるかどうかは分かりませんが、ただ、私の個人的意見としては、カジノへののめりこみも何らかの影響があったかと思います。

何故なら、同様の事件が、今年6月 フィリピンでも起きており、事件には非常に共通項が多いからです。

マニラのカジノ襲撃、実行犯はギャンブル依存(CNN)

上記記事を読んで頂くとお分かりかと思いますが、ラスベガスとフィリピンの事件の共通項は、

・犯人はカジノにのめり込んでいた
・ISが声明を出すも、関与は地元警察に否定
・事件は、犯人の単独犯
・発砲・放火後、犯人は自殺
・多数の犠牲者が出る

という点です。
驚くほど、似通っています。ですから、カジノへののめり込みによる影響の可能性は、排除できないと思っています。

さらに、このフィリピンの事件では、注目すべき点がもう一つあります。
それは、事件前に妻の求めによりカジノへの入場を禁止する、「家族排除措置」がとられていることです。

現在、日本のカジノ建設の是非についても取りざたされていますが、そこであげられている、ギャンブル依存症対策は殆どがこの、入場規制などの入口で対策をするというものになっています。しかし、それだけではギャンブル依存症の問題は防げないことを物語っています。

そして「カジノによる治安の悪化は考えられない」という主張も推進派からは多く聞かれます。
「むしろカジノができて、警備が充実し、治安は良くなるのだ」と。

確かに、ラスベガスのメインストリート等は、安全安心と言われ、真夜中でも女性の一人歩きができるほどです。
けれども、もしこの事件の動機にカジノへののめり込みがあったとしたら、果たして本当に「治安は悪くならない」と言えるでしょうか?

今回の事件で、日本にカジノを作るということは、決して安易な対策で決断されるべきではないと改めて思いました。

いずれにせよ今回の事件、動機の解明が急がれるところです。


編集部より:この記事は、一般社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2017年10月4日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。