【映画評】オペレーション・クロマイト

渡 まち子

1950年。突如北朝鮮が南へ侵攻しソウルを陥落させ、朝鮮半島のほとんどを支配する。事態を重く見た連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサーは、戦局打開のために仁川への大規模な上陸作戦を計画する。戦略的に不可能と思われたその作戦を成功させるには、北朝鮮軍に潜入したチャン大尉率いる精鋭の諜報部隊だけが頼りだった。正体がバレれば即座に処刑されることが確実な極限状況下で、チャン大尉は命懸けの作戦行動を開始する…。

朝鮮戦争の局面を一変させたクロマイト作戦を描く戦争映画「オペレーション・クロマイト」。当初はソ連や中国の支援を受けた北朝鮮が優勢だった朝鮮戦争だが、アメリカを中心とした国連派遣軍が極秘で行った仁川上陸作戦は、自由を守るために北朝鮮に潜入した名もなき韓国軍の兵士たちによって成し遂げられたという内容は、明らかにプロパガンダ色が濃厚だ。分断国家という複雑な状況にある国家の戦争を、単純な善悪では語れないのは承知の上で、あえて愛国心を刺激するエンタメ映画に仕上げているのだろう。マッカーサーが朝鮮半島の平和を願っただけで作戦を決行したとはとても思えないが、それでもこの映画が韓国で大ヒットを記録しているところを見ると、本作は韓国の映画ファンのツボにハマッたようだ。

イ・ジェハン監督は「戦火の中へ」でも朝鮮戦争を題材にしていて、こちらは青春映画の趣が強かった。一方、本作は、北朝鮮の軍人になりすまして作戦を遂行するスパイ映画として、実話に基づいた歴史秘話を描いたエンタテインメント作として、正統派の戦争大作である。明らかに別撮りと判る作りながら、マッカーサーを演じるリーアム・ニーソンは抜群の存在感だし、チャン大尉役のイ・ジョンジェもハードな役を熱演していて好演だ。情報を聞き出すために捕らえた敵兵を“輸送する”場面など、度肝を抜くシーンもあって、なかなか楽しい。激しい暴力描写も多いが、諜報員たちの母や妻子など、家族の存在で涙腺を刺激するのがいかにも韓国映画らしい。北朝鮮側の悪役が驚くほどしぶといのだが、彼が最後に叫ぶせりふの虚しさが余韻のように残ってしまうのは、核ミサイル実験を繰り返す北朝鮮が国際社会を脅かす現状が、現在進行形の出来事だからに違いない。
【60点】
(原題「OPERATION CHROMITE」)
(韓国/イ・ジェハン監督/イ・ジョンジェ、イ・ボムス、リーアム・ニーソン、他)
(愛国心鼓舞度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月10日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。