正直、「また朝日新聞はこんな姑息な印象操作を始めたのか」と呆れた。
例の「前川ネタ」がようやく飽きられたと思ったら、朝日新聞は衆院の解散選挙が決まった直後から、またしてもフェアではない印象操作を始めている。
今度はどうやら「安倍政権=ナチスですよ、みなさん!」というものらしい。しかも、人をうまく使って言わせるところが狡猾である。
一人は半藤一利氏で、もう一人が室井佑月氏だ。
北朝鮮危機は安倍総理の自作自演だと決め付ける半藤一利氏
先日、朝日新聞は本紙のほうで極めて異様な記事を掲載した。
聞き手 編集委員・駒野剛 2017年9月29日09時10分
(前略)国難といって現在、最大の問題は北朝鮮情勢でしょうが、これはご自分がつくっていませんか、自作自演の危機ではないか、と申し上げたい。安倍さんは国連総会で、今は対話の時でなく圧力をかけるべき時だと述べてきましたが、それでは危機を高めるばかりです。(後略)
半藤氏はそう言って、北朝鮮と対峙する安倍政権を、ナチスに追随した戦前の日本やヒトラー政権そのものになぞらえるのだった。
果たして、半藤氏の考えるように、今日の北朝鮮情勢は安倍総理が“作った”ものなのだろうか。国民生活を犠牲にしてまでの、あの危険極まりない水爆の実験や、日本列島を跨ぐ危険な弾道ミサイル発射実験などは、誰が見ても北朝鮮が自国の都合で勝手にやっている暴挙だ。
これに対して、「国際社会」がほとんど「総意」として反対している。安倍氏も日本も、この国際社会の一員という立場に過ぎない。
だいたい、半藤氏の論理だと、安倍総理の“自作自演”に習近平やプーチンまで協力していることになりはしないか。米大統領を動かすだけでなく、あの中ロをも操る・・・もしかすると、安倍晋三氏はものすごい指導者なのかもしれない。
安倍晋三氏が議員になったのは1993年(平成5年)だ。他方、北朝鮮の核・ミサイル開発自体、金日成の頃にスタートして、金正日の時代に大きく飛躍したものだ。金正恩はその国家プロジェクトを継承し、完成させようとしているに過ぎない。
もしかすると、安倍氏はまだ議員秘書だった時代から、北朝鮮の最高レベルの政治に影響を与えていたのだろうか。だとすると、彼は超人なのかもしれない。
安倍総理がナチスと同じ政治手法を取っていると言う室井佑月氏
一方、この記事から間をおかず、朝日新聞は『週刊朝日』のほうでも、安倍政権をナチスになぞらえる室井佑月氏の記事を出している。
彼女は、「指導者が国民を意のままに動かすためには自分たちが外国から攻撃されていると説明するだけでいい」という内容のゲーリングの談話を引用し、次のように続ける。
室井佑月「この流れでいいの?」『週刊朝日』(2017年10月13日号)
(前略)どう思った? あたしたちは、今、これをされているんじゃない?
国連で演説した安倍首相は、北朝鮮への恫喝に終始した。「必要なのは対話ではなく圧力です」と述べて。
隣国からの危険が迫れば、国民は力強いリーダーを求めるという。実際、北朝鮮のミサイルが飛んでくるたび、森友・加計学園問題でガタガタになっていた政権支持率が回復していった。(後略)
こうして、室井氏は、日本社会が戦前のナチスドイツと似た状況にあると臭わせる。そして、安倍氏は米国と北朝鮮の間を取り持つべきだとか、安倍友は北朝鮮のミサイル発射が事前に分かって安全な場所に逃げられるからいい、などと批判する。
この意見もまた、半藤氏同様、これまでの北朝鮮との四半世紀の対話のプロセスを無視したものだ。しかも、事実関係を押さえていない、誤認の多い記事である。
安倍氏の政治手法がゲーリングと同じだという決め付けは、イチャモン以外の何者でもない。だいたい「どう思った?」と訊くが、これはまんま金正恩政権のことではないかと普通なら思うだろう。彼女の頭の中ではナチスと北朝鮮は一切結びつかないらしい。
とりあえず、この件で詳しい内容は別途、記事にしておいた。
【関連記事「安倍の政治手法はゲーリングと同じと言う室井佑月氏の倒錯」*筆者サイト】
言っても無駄だが朝日新聞は正気に立ち返れ
以上の半藤氏と室井氏の記事は、内容に説得力があるならまだしも、ただのこじつけや言いがかりの類いである。朝日新聞はこういうコメディ記事を出してまで、現政権とナチスを同列だと思わせたいのだろうか。しかも、衆院の解散選挙が決まってから。
これは「政敵を悪魔化する」という古典的な政治手法である。しかも、当のナチスが好んだ手口だ。つまり、ナチスと似ているのは、北朝鮮や朝日新聞ではないか。
だいたい、安倍総理が本当に“ヒトラー”なら、なぜ室井氏や朝日新聞は無事なのか。
それに、こういう記事は無意味というか、本質を突いたまっとうな政権批判の主張までゴミで埋もれさせてしまうわけで、かえって逆効果でしかない。“共感”を覚える人はもともと反安倍の者だけであり、中立者・支持者に対しては何の説得力も持たない。
私たちが大新聞にのぞむのは、社会の公器を悪用してプロパガンダ的手法で政権を貶めることではなく、正しい判断材料となるフェアな視点による分析であり批判である。
「安倍=ヒトラー」などというフェイク左派の内輪でしか通用しないネタを新聞社が百万回披露したところで、一般国民の支持は得られない。
むしろ逆効果で、かえって政権交代も遠のくばかりだ。
【*以下、筆者サイトの関連記事等】
「アメリカが北朝鮮の核保有を認めるという主張ほどアメリカを理解していないものはない」
「米軍の超ハイテク戦こそバノンの言う「方程式の解」だ」
「北朝鮮が先制EMP攻撃なら日本終了」
(フリーランスライター・山田高明 個人サイト「フリー座」 )