「13日」と金曜日が重なった時

当方は朝4時前には起床する。そして最初の仕事はコーヒー豆を煎り、コーヒーポットに水を入れる一方、居間の壁にかかったホワイトボートに前日の日付けを消して、新しい日付けを書くことだ。そして気がついた。今日(10月13日)は金曜日だ。「13日」が「金曜日」と重なることはキリスト教社会では余り歓迎されない。現代人は迷信や昔の因習をもはや信じないが、「13日」と「金曜日」が重なる時、やはり嫌な感じをもつ人は少なくない。

嘆きの壁でのバル・ミツワ―(ユダヤ教徒の成人式)=ウィキぺディアから

2017年のカレンダーを見てみた。今年1月も「13日」が「金曜日」だったが、新年の喧騒な雰囲気の中で気がつかなかった。10月13日は今年2回目の「13日」と「金曜日」が重なった日だ。

ところで、「13日」と「金曜日」が重なれば、欧州人はしかめ面こそしないが、なぜ嫌な気分になるのだろうか。これまで良くいわれた説は、人類の救世主イエスが十字架によって殺害された日が金曜日であり、13日だったという説明だ。もちろん、イエス時代、そのような重なりを不吉と考えた弟子たちはいなかったが、中世時代に入った頃、聖書を研究していた神学者が気がつき、説教の中で信者たちに語ったことから「13日金曜日」の不吉説が定着していったのではないか。

高層ビルでは「13階」はなく、12階の後はすぐに「14階」となる。ルフトハンザ航空の機内では「13番」の席順はない、といった具合だ。航空会社の中には「13」だけではなく、「17」という数字も避ける。なぜならば、イタリアでは「17」が不吉な数字だからだ。

社会学的にも、「13日金曜日」に異常に恐怖を感じる「13日金曜日フォビア」(Paraskavedekatriaphobie)という症状がある。スポーツの世界、例えF1(フォーミュラ1)の世界では「13」のドライバー番号は存在しない。

興味深い点は、ユダヤ教では「13」という数字自体はいい数だ。例えば、13歳になれば成人入りできる(バル・ミツワ―)。当方は米TV番組の推理サスペンス「パーセプション」が好きでよく観たが、そのシリーズの中で、中国では不吉な数は「13」ではなく、「14」だと語るシーンがあったことを思いだす。「14」の部屋が空いていたにも関わらず、中国学専攻の大学教授は隣の小さな「13」の部屋を仕事部屋にするという話だ。その理由は「14」は不吉な数字だからという。

欧州と中国では数字の意味も異なっているわけだ。だから「13日金曜日」の話は欧州社会だけに通用するものかもしれないが、グローバルな社会では欧州の慣習や風習が他の文化圏にも自然に広がっていく。「13日金曜日」の話は非キリスト教圏の日本でもよく知られている話だろう。

「13日金曜日」不吉説を書いていた時、韓国気象庁が13日、「北朝鮮北東部の咸鏡北道吉州郡にある豊渓里核実験場付近で日本時間同日午前1時41分、マグニチュード(M)2.7の地震が発生した。震源の深さ3キロ」というニュースを流した。地震は「自然地震による」という。震源地は北が6回目の核実験をした場所から北北西約10キロしか離れていないが、今回は北の7回目の核実験ではなかったという。

朝鮮半島の地震計が揺れる時、自然の地震でも核実験による人工地震であっても、不安が出てくる(「北の地震は『人工』でも『自然』でも大変」2017年9月25日参考)。いずれにしても、北で今年最後の「13日金曜日」に自然地震が起きたことだけは確かのようだ。

参考までに、北の地震が人工地震であった場合、「13日金曜日」説は意味をなさない。金正恩労働党委員長が意識的か、無意識に「その日」を選んだだけに過ぎないからだ。しかし自然地震の場合、「13日金曜日」説は俄然意味を帯びてくることになる。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。