【映画評】アナベル 死霊人形の誕生

孤児院の6人の少女たちと若いシスターは、人里離れた場所に建つ、古くて大きな屋敷にやってくる。そこには12年前に愛娘を亡くす悲劇に見舞われた人形師とその妻が暮らしていた。新生活に期待を募らせる少女たちだったが、家の中には不気味な気配が漂っていた。脚が不自由なジャニスは、ある時、鍵がかかっているはずのドアが開いていることに気付く。そこにいたのは、人形職人が作った呪いの人形・アナベルだった。怪奇現象が頻発し、やがてアナベルの呪いが少女たちを襲い始める…。

人気ホラーシリーズ「死霊館」に登場する呪いの人形アナベルの起源に迫るホラー映画「アナベル 死霊人形の誕生」。スピンオフという位置付けだが、「死霊館」や「アナベル 死霊館の人形」に登場する実在する死霊人形の誕生秘話を描く本作は、いわゆる“ビギニング”である。アナベルが生まれた理由や呪われた経緯が明かされ、その後の恐怖にしっかりとつなげたストーリーは、シリーズのファンを納得させ楽しませるものだ。アナベル誕生の背景には、最愛の娘を失くした親の深い悲しみがあって、そのことが判断を狂わせる。決して入ってはいけない領域へ足を踏み入れた代償は、あまりにも大きかった。

本作でメガホンを取るのは「ライト/オフ」のデヴィッド・F・サンドバーグだ。なるほど、暗闇とその効果をうまく使っているが、閉鎖に追い込まれた孤児院から来た少女とシスターという行き場のない人間たちが、逃げ場のない古い屋敷に閉じ込められるという構図が上手い。さらに、いるはずのない何者かの気配や、ひとりでに鳴りだすレコードの音楽、自然に開閉するドアや動き出すエレベーターなど、ホラー映画のテッパンともいえる恐怖演出をジワジワと積み重ねて、シリーズファンには見慣れた呪いの人形・アナベルへと導いていく演出が、巧みだ。邪悪な存在をいち早く察知した脚が悪い少女の運命を見届ければ、これがその後の長い長い惨劇の元凶だったのかと戦慄が走るはず。邪悪な霊は、人間の深い嘆きや弱さを常に狙っているのだ。「私を見つけて」というメモの言葉が、アナべルの強烈な呪いの拡散力を物語っている。
【60点】
(原題「ANNABELLE: CREATION」)
(アメリカ/デヴィッド・F・サンドバーグ監督/ステファニー・シグマン、タリタ・ベイトマン、ルル・ウィルソン、他)
(原点度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年10月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。