野生のサルを捕獲する方法は,意外に簡単である。
捕獲網箱にリンゴを入れておけば、猿が手を入れてリンゴを握っている時、簡単に捕獲する。
リンゴを手放すと手が網箱から抜けられ自由になるはずなのに、最後までリンゴを手放さないサルの愚かさを利用して簡単に捕獲する。
北朝鮮が核を放棄しない理由は72年間3代孫まで執権してきた長期政権を守るためである。
チャウシェスク、フセイン、カダフィの長期政権は、核を持ってないから崩壊したと北朝鮮は教訓に受け止めている。これが核を手放さない最大の理由である。
しかし、長期政権を守る為の核が逆に北朝鮮政権を倒す恐れがある。
北朝鮮指導層はこう言う危険性を自覚しているのか?疑問が増幅される。彼らも愚かではないからだ。
現代戦は全面戦ではなく、限定的な局地戦とピンポイント精密打撃が特徴である。北朝鮮が万が一、対南攻撃火遊びを犯した場合は、金正恩も終わりという事実をよく知っているはずだ。だから、大規模な火遊びは犯さないと考えられる。結局は,国際社会の制裁と米国の圧力に北朝鮮が頭を下げて譲歩する可能性が出て来る。
トランプ大統領の過激な威嚇発言は外交、安保、情報補佐陣のコンサルティングに基づいた、計算された心理戦の一環だと考える。
北朝鮮特権層と社会に戦争恐怖心と焦りを植え付けるためであろう。
北朝鮮特権層が「このままでは金正恩と一緒に我らも共倒れる危険性がある」「金正恩を除去しなければならない」と言う世論が拡大するだろう。だから米国は最大の制裁と圧力を強めていると考える。
このような状況で、北朝鮮が危険水位ぎりぎりの冒険に踏み切る場合、米国は第2の真珠湾攻撃及び第2の9.11テロとして受け止めるだろう。
米国は、北朝鮮が危険水位を超える挑発を行った場合、軍事行動のチャンスとして受け止めると考える。
しかし、北朝鮮への消滅攻撃はあくまでも最後のオプションだろう。
米国は大規模な軍事行動より、ピンポイント空爆や精密打撃で北朝鮮指導部を除去する斬首作戦を優先順位に設定していると考えられる。
筆者の軍情報分析経験に照らしてみれば米国の軍事行動に北朝鮮の反撃は難しいと考えられる。
マティス国防長官の発言通りに,ソウルと東京,在韓米軍家族に被害が届かない軍事行動が出来る。
それを可能にするのが、情報大国,アメリカの情報収集資産である。
すなわち、偵察衛星、U-2機、グローバルホーク無人機、グレーイーグル(暗殺用無人機)及び通信傍受と人間情報を綿密にクロスチェックしながら、北朝鮮の動きを24時間リアルタイムで監視する。米国の軍事行動•意思決定は済みだと考える。米国が対北軍事行動に踏み切る時期は北朝鮮が核弾頭ICBMを実戦配備する来年半ばだろう。米國が軍時行動を実行するかどうかは,北朝鮮の出方次第である。
北朝鮮が核保有に拘る最大の目的が体制保護だが核が逆に体制崩壊を招く可能性が高まっている。
北朝鮮のエリート支配層が体制安全を守るために、賢明な選択肢を取るように期待したい。北朝鮮のエリート支配層は愚かではないからだ。
(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授、元国防省北韓分析官)
※本稿は『世界日報』に掲載されたコラムに筆者が加筆したものです。