よく「地方は住みやすい」と言う人がいます。
もちろん、純粋に当人の主観であれば、異議を唱える余地はありません。ただ、地方にも東京にも住んだわが身としてできるだけ客観的に比較検討し、「地方の活性化策」を述べてみたいと思います。
まず、「地方は物価が安い」とよく言われますが、この指摘はアテになりません。
地方にいても買い物はコンビニやスーパー、はたまた全国展開の量販店なので価格差はありません。ユニクロのフリースを、地方では安く売っているということはありませんから。
家賃はたしかに地方の方が安いですが、驚くほど安いわけではありません。
2LDKの平均家賃で比較すると、八王子市が9.21万円であるのに対し、(私が二度ほど赴任した)高松市は6.14万円です。
月に3万円も違いません。スペースが狭くなれば家賃格差はますます縮小します。
家を建てる場合の土地の価格には(場所にもよりますが)大きな違いがあるでしょう。
しかし、上モノである建物を全国展開のハウスメーカーに注文すれば、単価は全国どこでも同じなので(土地建物全体で考えれば)驚くほどの違いは出てこないはずです。
通勤時間は(総じて)地方の方が圧倒的に短く、マイカー通勤ができる場合も多いです。
ただし、人事異動で県内の別の地域に移動させられたりすると、単身赴任を覚悟しなければならないこともあります。三重県在住の私の友人で、尾鷲と熊野に転勤になった2人は、いずれも単身赴任しました。
リアル店舗のボリュームや多様性では、地方は圧倒的に劣位にあります。擁する人口が少なく、地元企業の賃金がやすいので、東京で激戦をしているラーメン店すらあまりなく、ファッション関連のリアル店舗はほとんどありません。
もちろん、規模の大きな地方都市であればそれなりにあるでしょうが、都会には遥かに及びません。
賃金や福利厚生は、東京の大企業と地方の中堅中小企業の間には天と地ほどの開きがあります。
私が長銀の高松支店に赴任していたとき、女性行員が結婚しても子供ができても退職しない理由を尋ねると(当時は全国的に寿退社が普通でしたが、長銀高松支店の女性行員の約9割が既婚者でした)、「夫の給料が私より遥かに低いので到底辞められない」とのことでした。
「地場産業で30年近く働いて退職金が20万円だった」という話も耳にしたことがあります。
子育ては、地方の方が圧倒的に楽だと感じます。
マイカー通勤で場所的範囲も狭いので、帰宅時に幼稚園にすぐに迎えに行けます。
幼稚園バスの運行距離も短くて、子供たちも楽です。実家の両親が健在であればさらに便利です。
結論的に言えば、大企業の支店や支社(もしくはそれと同レベルの企業)に勤務して高級好待遇で働き、リアル店舗のボリュームや多様性に目をつむれば、地方の方が快適な生活ができると考えます。
とりわけ、子育て世代にとっては利便性が高いでしょう。
このように考えると、現時点での地方活性化の最大の問題は「賃金と待遇」に尽きるようにも思えます。
であれば、既存の地場産業を「ふるさと納税」で延命させるより、いっそ規制緩和特区をどんどん作って大企業の誘致や成長企業の拠点にした方が賃金が高くなって若者も集まりやすくなると考えます。
以上、さして経験が豊富でもない私の主観も多々混入しているので、多くの方々のご意見をいただければ幸いです。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年10月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。