ライアン航空から140人のパイロットを引き抜いたノルウェジアン航空は活発に航空路線の開拓に挑んでいる。ライアン航空から引き抜いたパイロットも含めて今年は総勢400人近くパイロットの増員を予定しているという。
1993年1月28日に50人乗りのフォッカーを初飛行させてノルウェーで誕生した航空会社Busy Beeがそのルーツである。その後、合併した企業が倒産したり、スカンジナビア航空の傘下に入ったことも経験した。2002年にその傘下から離脱して、ノルウェジアン航空として6機のボーイング737-300でオスロとスイスのベルナを結ぶ路線を格安航空として初飛行した。
今年はボーイング737が新たに23機加わり、現在使用している4機が役目を終えることになっている。即ち、19機が新たに加わることになる。ノルウェジアン航空も1機につき10人のパイロットを必要としていることから190人のパイロットを新しく雇用することになる予定だという。
また、長距離路線で飛ばすボーイング787も9機が加わることになっている。この場合は1機につき22人のパイロットが必要になり、198人のパイロットも採用する予定だとしている。
その場合も、「ライバルの航空会社から引き抜く予定だ」ということが同社よりスペイン電子紙『El Independiente』に回答された。
ノルウェジアン航空は路線の開拓で、当初ライアン航空と提携することが予定されていた。ヨーロッパの航空業界においても、両社が提携することは確実だとされていた。ところが、それが両社が対立するという結末に至ったのである。
結局、ノルウェジアン航空はライアン航空の直接のライバルであるイージージェットと提携した。
そんな経緯もあったことから、ライアン航空のオレアリー社長は同航空からノルウェジアン航空に転職しようとしていたパイロットたちに「ノルウェジアンは4-5か月で倒産する。毎日、お金を損失している。新しく発注した機材を支払う資金も持っていない」と言って、パイロットの転職を防ごうとしたという。皮肉にもそれから2週間後にライアンは2000便以上のフライトのキャンセルをすると発表したのであった。
確かに、ノルウェジアンは多額の負債を抱えている。今年上半期までの負債額は20億7000万ユーロ(2700億円)というのが明らかにされている。
現在、ノルウェジアンはヨーロッパとアメリカで500か所の都市に向けてボーイング社の142機を使って飛んでいる。
ヨーロッパの格安航空の競争は益々激化している。最終的にはより安価で、より多くの路線を持っている航空会社が有利となっている。ライアン航空が急成長したのは正にこの二つの要因を満たしているからである。
この激化して行く格安航空の業界にあって、それに勝てない航空会社もこれから更に増えて行くはずである。今年はエア・ベルリンと英国のモナークが破産した。また格安航空の攻勢で、それに勝てなかった一般航空会社にアリタリアがある。同社は破産か救済かまだ明確にされていない。現在まで7社が買収に関心を示しているという。ライアン航空が当初アリタリアの買収に関心を示したが、度を越えた多数のフライト・キャンセル問題を解決せねばならないとして、買収する件は中断された。
10月に入って、エア・ベルリンの後を追うかのように上述した英国のモナーク航空が破綻した。同航空を利用して外国に行った乗客11万人の帰国を英国政府が主導して解決に取り組んでいる。更に、これからフライトを予定し予約チケットを購入していた乗客が75万人いるという。
モナークは昨年630万人の乗客が利用し、英国から外国の40の都市に飛んでいた。スペインには336万人が同航空を利用した。同航空の破綻で、スペインでは12の空港がその影響を受けることになるという。
また、モナーク航空は2015年は3060万ユーロ(39億7800万円)の利益を計上したが、昨年は激しい価格競争とBrexitによるポンドの下落が影響して3億3000万ユーロ(430億円)の赤字に転落した。2014年に1000人を解雇して、現在2750人の従業員を抱えていた。
今回の破産に加えモナークでは融資の問題も発生している。エアーバスに36機、ボーイングに737MAXを32機それぞれ発注しており、その為に35億ドル(3900億円)が既に融資されているからだ。
ヨーロッパの格安航空業界には航空会社が多過ぎることから、激しい価格競争で石油の価格が値上がりすれば、コスト負担に耐えて行くことが出来なくなってこれから更に破産する航空会社が出て来るはずである。