「PDCA」は古い!今後は「CAPD」で動かすべき

尾藤 克之

写真はイメージを伝えるために書籍より引用。

アゴラでは、「出版道場」という出版ニーズに応えるための実践講座を年2回開催している。その影響もあり、著者や出版社から献本されることが非常に増えている。良著と思われるものを記事にしているが、今回は、『1分で仕事を片づける技術』(あさ出版)を紹介したい。著者は、経営コンサルタントの鈴木進介(以下、鈴木氏)である。

最近のビジネス書の特徴に「わかりやすさ」がある。難しい理論も「わかりやすく」表現し、ページ数も圧縮傾向にある。また、「わかりやすさ」を表現するものにイラストがある。各社ともに特徴があるが、「あさ出版」は、重要と思われる箇所には必ずイラストでアイキャッチを高める工夫がしてあり目を引く。上手いつかい方である。

PDCAをやめて「CAPD」で動く

――PDCAという理論がある。仕事の効率性を高める理論で、Plan(計画)、Do(実行)、Check(振り返り)、Action(改善・処置)の頭文字を取ってPDCAサイクルと命名されている。実行の是非はともかく、聞いたことがある人は多いのではないか。

「効率よく業務を行う仕事の進め方に『PDCA』という考え方があります。Plan(計画)、Do(実行)、Check(振り返り)、Action(改善・処置)の4つのステップの順で進めていくことで、ムダなくモレなく進めることができることから、仕事の基礎とも言われています。スピードアップを目指すなら次のように考えることもできます。」(鈴木氏)

「たしかに『PDCA』を実行することで、仕事は着実に進めることができます。より仕事のスピードアップを図るには、『PDCA』の順番を入れ替えるのです。Check(振り返り)→Action(改善・処置)→Plan(計画)→Do(実行)の順で進めるのです。」(同)

――コンサルタントが得意とする、「仮説→検証」の作業を最初に時間をかけてするといえばわかりやすいだろう。しかし「仮説→検証」に時間が掛かりすぎると後工程にある、Action(改善・処置)につながりにくくなるので注意が必要だ。

「まず、『Check(振り返り)として現状はどうか?』を考えます。続けて『Action(改善・処置)、何から改善していけばよいのか?』を整理します。そのうえで、Plan(計画)、Do(実行)と続きます。現状を振り返り、そこにうまく新たなやり方を導入できるようチューニング作業が先に必要というわけです。」(鈴木氏)

「計画の障害になる要因があれば進行するうえでの足かせにもなります。せっかく立てた計画も絵に描いた餅の理想論で終わる危険性が高まります。現状を振り返り、今後の計画の障害要因を先に取り除くことが大切です。」(同)

仕事がはやい人は振り返りから始める

――これは、通常のPDCAとは異なり、現状を振り返り実行に入ったほうがスピードが上がることを示唆している。最初に検証したゴールを設定することにも似ている。

「Aさんの職場の近くに、いつも行列ができているラーメン屋があります。ランチの時間ともなると、さらに行列は膨らむ一方、Aさんも時間ができるたびに足を運ぶのですが、結局いつも食べることができず、その隣の定食屋で何度もランチをしています。ラーメン屋に並んで偶然入れるのを待っていては極めて非効率です。」(鈴木氏)

「はっきり言って時間のムダです。Check(振り返り)曜日、時間、天気などを振り返って、どの時間帯に狙って行けばよいかの行動を考えながら、Action(改善・処置)をしなければラーメンは食べられません。振り返りの効果は高いのです。」(同)

――コンサルタント経験者なら周知しているが、PDCAに限らず、「仮説→検証」の段階で必要以上に時間を掛けすぎても有益なアウトプットがでないことも多い。本記事で紹介している「CAPD」もそうだが、「C」の振り返りに時間がかかりすぎて行動が抑制されることは好ましくない。つまりは程度の問題ということになる。

「時間をじっくりかけて振り返りをした」「時間をかけて仮説検証をした」。ところが、時間が掛かりすぎて、ロジックが成立しなくなっていた。これは今回の衆院選に似ている。各陣営は選挙参謀がいて入念な戦略策定をおこなったはずである。ところが、ちょっとしたことが起因となり想定外の結果になることはよくある。

本書には、今回紹介したPDCA以外にも、多くのメソッドが紹介されている。仕事が早いうえに成果を出し続ける人は、いったいどんなやり方をしているのか。平易に分解された仕事術を知りたい人には役立つのではないかと思う。

参考書籍
1分で仕事を片づける技術』(あさ出版)

尾藤克之
コラムニスト

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