「ゴミ集積場」は生活感あふれるリアルで素敵な場所?!

尾藤 克之

参考書籍より引用

今日は、分別ゴミに関する話題を提供したい。皆さんの住んでいる地域では、分別ゴミは徹底されているだろうか。写真は、私が住んでいる地域のゴミ集積場である。分別がまったくできていない。今日は、いつの間にか家電が置かれていた。この状態では清掃車が持っていってくれないので、写真に収めて区役所に通報するつもりだ。

誰もが見た目にダマされる

実は、この写真はジオラマである。本物に見えないだろうか。テレビ、ツイッター、雑誌で大注目のジオラマアニメーター・MOZUの作品集『MOZU超絶精密ジオラマワーク』(玄光社)から引用している。なお、MOZUの本名は水越清貴。アゴラでも何回か紹介している、メディア・アドバイザーとして活動する水越浩幸氏の子息になる。

メディア出演実績についても紹介したい。TBS主催のアジア最大の映画祭「Digicon6」で、Youth部門の最優秀賞ゴールドを受賞。アメリカのテレビ局「RightThisMinute」「NHK ワールド」日テレ「スッキリ! 」、「週刊新潮」のカラーグラビアでも紹介される。今回は、なぜ、ジオラマに取組むようになったのか、経緯について聞く。

参考:ジオラマであることがわかる画像

――作品の多くは、ゴミ集積場や電柱、教室など、通常では扱わないディテールのものが多い。なぜこのようなものを作品にしているのか。

「ゴミ集積場は、展示会に提出するジオラマ作品の題材を探していた時に行き着きました。日頃から近所のゴミ捨て場が目に入ってきました。よく見ると、こんなに生活感に溢れた場所はなく、つくってみたかった家電もあり、僕の好きなものが詰まっていることに気がつきました。展示会用の作品だったので工夫も必要でした。」(MOZU)

「360度どこからでも鑑賞できるようにするのが作品のポイントです。ゴミ捨て場だけではなく周囲のアスファルトまで再現しているのは、こういう事情によるものです。近所にあったゴミ捨て場だけでは参考にする材料が足りなかったので、イーンターネットで検索してゴミ捨て場のエッセンスを集めて作品に反映させています。」(同)

――この作品は、学校に提出する締切があったことから、寸暇を惜しんで作業に没頭していたようである。ほかに、作品にまつわるエピソードはないだろうか。

「テーマは日常的なものが多いです。テーマさえ決まれば、あとは一気に発想が膨らんでいきます。以前、三角定規を描いたことがあります。ノートの上にそっと置いてあるかのごとく丁寧に描きます。消しゴムの消しカスもしっかり見て描きます。さらに、バリエーションを増やして、たくさん描いてみます。」(MOZU)

「ある日、3つの定規が描いてあるノートを開いていると、先生に質問されました。『なんでそんなに三角定規を持っているのか』と。描いた三角定規ですから、ノートをパッと逆にしても落ちません。先生は目を丸くしていました。」(同)

――また、描くことは簡単だと言う。本物を横に置いて描くだけだから、誰でもできる。書き終わると、新しいモチーフはないかと探し始める。

「数学の時間に、とある問題が目に入ってきました。A君とB君がある場所まで行き、その時間を答える問題です。ただし興味がわいたのは、問題ではなく図形の方でした。2つの伸びた線、もし片方がものすごく遠回りしていたらどうなるのか。そんな発想で、線があらぬ方向に出るなど、アイデアが吹き出てきました。」(MOZU)

「線を湾曲させて描いて、指にも線を描くことで、一定の角度から見ると、本当に線をつまんでいるように見えます。描いている道具は、コピックのペンと鉛筆、そして影をぼやかす時に使うティッシュだけです。それ以外は使いません。」(同)

子供の好きなことを伸ばす

――次は、水越浩幸(父親)氏に話を聞く。子供が小さい頃、どのように接していたのだろうか。アートや漫画に関する英才教育でも施したのだろうか。

「もともと僕は小学校の頃から漫画が好きで自分で描いていました。結婚して息子が生まれて保育園に入ってから、僕の仕事が遅くなってなかなかコミュニケーションが取れないようになったんです。何かコミュニケーションできる方法がないか考えている時に、漫画が面白いのではないかと思いつきました。」(水越浩幸)

「小2くらいには、ノートにコマ割りの線を引いて、漫画のようなものをつくっていました。実は、勉強も漫画でも何でもよかったんですよ。好きでやっていることであれば。小3になると、漫画家になるセット(漫画家キット)を買い与えました。一式そろってるのがあって、それをいつも持ち歩いていましたね。」(同)

本書は、MOZUの作品集になる。写真以外では、MOZUの幼い頃からの歴史や、両親の関わりあい方、教育方針までが網羅されている。アニメーションディレクターの伊藤有壱(東京藝術大学大学院教授)との対談も興味深い。なお、11月から出版記念イベントが全国有名書店で開催される。気になる方はチェックをしてみてはいかがだろうか。

参考書籍
MOZU超絶精密ジオラマワーク』(玄光社)

尾藤克之
コラムニスト

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