代表的基準原油である北海ブレントの原油価格が2015年以来、ほぼ2年ぶりに60ドルを超えた。
10月27日(金)の終値は60.44ドルで、見事なバクワデーション(先安)を示している。
一方、アメリカのWTIの終値は53.90ドルで、期近月の翌月から数ヶ月はコンタンゴ(先高)となっており、それからゆるやかなバクワデーションを示している。
ブレントとWTIの価格差が6ドル強となっていること、さらにバクワデーションの様相がブレントとWTIとで違うこと、これらが意味するのは何なのか、考え続けている。
このような市況展開の中、米、仏のスーパーメジャーはそれぞれ2017年第3四半期の決算を発表し、前年同期比大幅な利益増を見せた。BP、シェルは来週発表の予定だが、おそらく同じような基調を示すのだろう。(単位:億ドル)
3Q17 | 3Q16 | 9M17 | 9M16 | |
エクソンモービル | 40 | 27 | 113 | 62 |
シェブロン | 20 | 13 | 61 | ▲9 |
トタール | 27 | 21 | 77 | 59 |
筆者は『原油暴落の謎を解く』(文春新書、2016年6月)の中で、シェールオイルが「まとまった数量を増産できる価格水準は60ドル以上ではなかろうか」と書いた。当時、想定していなかった事態がいくつか起こっている。
一つは、ブレントとWTIの価格差だ。当時の2ドル程度が続くと考えていたが、現在は6ドル以上になっている。この価格差は、今後どう推移するだろうか?
もう一つは、スーパーメジャー等の資金力があるプレイヤーの本格参入だ。外部資金に依存する中小のシェール業者は、価格の短期変動に敏感に開発・生産活動を反応させるのだが、大手石油会社は「手金」で事業を行っている。したがって、価格の短期変動にはあまり影響されない。価格が下落し、中小業者が維持できなくなると、大手石油会社に資産を、あるいは会社ごと吸収されることになるだろう。この傾向は当面続くだろう。
これらも織り込んで、そろそろ来年の価格動向について考える必要があるなぁ。
さて、FTが “Brent oil above $60 level for first time since 2015” (around 2:30am on 28th Oct 2017) のポイントを次のとおり紹介しておこう。
・ブレントがほぼ2年ぶりに60ドルを超えたが、これは市況がタイト化する新たなサインではなかろうか。
・LDN時間の午後、60.53ドルで取引されているが、今年6月の底値45ドルから35%の回復だ。
・2014年半ば対比、ほぼ半額となっている低価格が世界の経済成長を支え、石油需要増につながっている。今年初めからの協調減産も功を奏している。60ドルはサウジが目標としているものだ。
・(OECDの)「過去5年平均対比の商業在庫の過剰は、年初からほぼ半減し、1億6,000万バレルとなっている」とオイルブローカーPVMは指摘する。
・さらに来月(11月30日)のOPEC総会で協調減産を来年後半まで延長するだろう、との示唆が関係者から継続的になされていることも影響している。
・最大の不確定要因は米国シェールオイルの動向。2017年には再度増産傾向となったが、最近になって収益性を重視する声が出始めており(これまでは「収入<資本投資」でも外部資金が流入していた)、価格がある程度上昇してもこれまでのような急成長をないのでは、との見方もある。
・60ドルを維持できるか、あるいはさらに上昇するか、疑問視する声もある。シェール増産が天井を抑えることになるのだろうか。
編集部より:この記事は「岩瀬昇のエネルギーブログ」2017年10月28日のブログより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はこちらをご覧ください。