新入社員、悲喜こもごも…。

荘司 雅彦

今年の4月に入社した新入社員のみなさんも、半年以上が経過して悲喜こもごもの状態ではないでしょうか?転職をすれば「新入社員」にリセットできますが、「社会人一年生の新入社員」には二度と戻れません。

私が長銀高松支店に新入社員として赴任した時、寮の先輩に「これから1年間、良きにつけ悪しきにつけ君たち二人は店内の注目を浴びることになる」と言われました。
最初は意味がわかりませんでしたが、すぐに事情が理解できました。

全店を挙げての新人歓迎会では派手な出し物をさせられ(女性行員と一緒だったので、知らない者同士6人の準備は大変でした)、その後の行事でも何かにつけて「おい、新人、何かやれ!」と命じられ、寮ではテニスコートのローラーがけから夜食の素麺作りも新人の仕事でした。

興銀高松支店の独身寮ではヒエラルキーが確立されていたようで、3年目以上は「雲上人」、2年目は「平民」、新人は「奴隷」だったようです(笑)

今でも新入社員は大変なようです。
少し前、最寄りの駅前で通りがかるすべての人に、不動産の購入を勧めている新入社員らしき男女を見かけました。会社としては売れることを期待しているのではなく、初対面の人への声がけの訓練なのでしょう。

私も着任早々、法人営業の取引先であった伊藤忠商事の高松支社に一人で集金に行かされました。
「商品内容もよく知らないのに…」と不安だらけでした。
「わざわざ来てくれてご苦労さん」とお付き合いで入金してくれた支社長はともかく、初めて口座をつくってくれた20代後半の女性社員の顔は女神様のように見えたものです。

5月6月になると、今でも郵便受けに地元の銀行や証券会社のチラシが入っており、「私、当地域の担当になりました〇〇です。今年☓☓大学を卒業した新入社員で、趣味は…」などと書いたものが添えられています。
おそらく上司の指導なのでしょうが、「新人を売り物にする営業」を私は感心しません。

先の伊藤忠商事に集金に生かされた時も、私は絶対に「新人です」とは言わないようにしました。研修で「新人という言い訳は、お客様には絶対に通用しない」と叩き込まれていたからです。

「新人を売り物にする営業」をさせる上司は、顧客が自分の新人時代を思い出して格別に配慮してくれることを期待しているのでしょう。中にはそういう人もいるかもしれませんが、ほとんどの顧客は「新人に任せて大丈夫だろうか!」と不安になるはずです。
とりわけ大事なお金を預ける金融機関の場合には…。

上司や先輩が新人の横に付いたり連れてきて「新人の研修のために連れてきました」というのは、「ああ、OJTをやっているのだなあ」と好感が持てることもあります。

しかし、ミスをした時の責任をすべて新人に押し付けるを見ると思いっきり腹が立ちます。OJTなら、指導担当が最終責任を負うべきだからです。

今でも忘れられないのが、着任して間もなく、上司に「窓口に出てお客様の相手をしろ」と命じられたときのことです。「まだ事務手続きがわかりません」と言ったところ「心配するな、俺が責任を取ってやる」ということで、いきなりテラーにさせられてしまいました。

対応した何人かのお客様の一人に対して事務手続ミスがあり、運悪く次長(現在の副支店長)にまでクレームの電話が行きました。

次長が上司にその旨を告げると、上司は大慌てで「荘司くん、一体何をやったんだ!次長に説明したまえ」と私を次長の前に立たせて延々とお説教をしたのです。

「俺が責任を取ってやると言ったのは誰でしたっけ?」と心のなかでつぶやきながら、「この上司は信用出来ないな」と早々に確信した次第でした(笑)

荘司雅彦
講談社
2014-02-14

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。