暗さ・狭さから生まれるもの

19年目の神山アーティスト イン レジデンス(KAIR)

多額の制作費を用意してアーティストを集めるのではなく、お遍路さんへのお接待のようにアーティストをもてなす、場に働きかけることで、結果として、素晴らしいアーティストが毎年集まってきます

→ 詳しくは、こちら。
場の魅力を高めることが、日本一の現代アート展に(徳島県神山町)

僕は、光と影がおりなす重層的な変化に神山町の美しさの神髄を見いだしているのですが、今年の作品は光と影を意識しているものが多かったように思いました。

どの作品も素晴らしかったのですが、1番印象に残ったのは、スペインから来られたパブロ・メルカドさんのこの作品。

写真では、ちょっと分かりづらいですね。

カメラの原理を応用して、廃校になった下分(しもぶん)小学校の一室に穴をつくり、丸い穴(窓)から今の神山の姿を映し出すものです。人や車が動く様子も見ることができます。

この作品がすごいのは、同じような部屋が3つあり、1つ目の部屋は直接外から光を取り込むのですが(この写真です。)、2つ目の部屋は、1つ目の部屋から反射させて間接的に取り込みます。

そのため、2つ目、3つ目の部屋はとても暗く、目が慣れるまでほとんど見えません。何分も、何十分もずっと目を凝らします。

狭い部屋ですから、動いて服がこすれる音や他人の声だけが聞こえます。感性のある部分が研ぎ澄まされていきます。

人間って、暗い・狭いは本能的に怖いんですね。そして、怖さを共有するからこそ妙な一体感が生まれます。地元の方も、アートが好きな人も、たまたま神山に来た人も時間を共有します。

大好きなお祭りもそうですが、山車や神輿が出ているときより、出るのを「寒い、寒い」と言いながら、みんなで待つ(待つり=待っている)、時間を共有するのが醍醐味。そこに、セレンディピティ(偶然の出会い)があります。

移住者、二地域居住者、旅人が増える神山町ですが、最先端のアートが、実は古くからの住民との架け橋になっているのが面白いなと思いました。

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<井上貴至 プロフィール>

<井上貴至の働き方・公私一致>
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<井上貴至の提言>
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編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2017年11月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。