2017年10月は慌ただしかった。衆議院選挙は野党がばたばたしたあげく、自民党が漁夫の利を得た。ほかにも、ノーベル文学賞もあった。
そんななかで、僕がずっと気にしていたことのひとつが、中国とアメリカの動きだ。とくに11月4日には、アメリカのトランプ大統領が来日した。そこで、2つの大きなテーマに注目して話をしたい。
まずアメリカは日本に、貿易面でかなり強い要求をしてくるだろう。トランプ大統領は、年700億ドル程度の対日貿易赤字を問題視している。その解消を求めてくるのは間違いない。
10月16日、麻生太郎副総理とペンス副大統領の間で、日米経済対話が半年ぶりに行われた。そこでアメリカは、日米2国間での自由貿易協定、FTA交渉の開始を要望している。
アメリカは、農畜産分野で一段の市場開放を求めていた。自動車分野では、日本側がアメリカ車などの輸入自動車の検査手続きを、緩和することで合意している。さらに、薬価の問題も取り上げられるだろう。
もう1点は、言うまでもなく北朝鮮問題である。いまアメリカは、北朝鮮への態度について、意見が2つに分かれている。ティラーソン国務長官、マティス国防長官は、トランプ大統領と金正恩氏のトップ会談を考えている。それに対してトランプ大統領は、「対話は時間の無駄」「対話より圧力を」という姿勢を崩していない。
そのような時期での来日で、トランプ大統領はいったい日本に何を求めてくるだろうか。
かたや、中国では27日に党大会が閉幕した。この党大会で習近平主席は、「党中央の核心」と位置づけられた。この「核心」という呼称は、これまで毛沢東、鄧小平にしか使われていない。習近平主席の強い権力を表しているといっていい。
同時に中国は、「中国の特色ある社会主義」をうたった。今後15年でアメリカに追いつき、30年後には世界一の国になるというのだ。
だが、その一方で中国は、言論の自由への弾圧を強めている。アメリカと中国、トランプ大統領と習近平主席に共通するのは、迷いのない「強さ」かもしれない。この2つの大国に、どう対峙していくのか。安倍政権にとって大問題だろう。
編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年11月6日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。