英国の中央銀行であるイングランド銀行は11月2日の金融政策委員会(MPC)で、10年ぶりとなる利上げを決定した。7対2の賛成多数で政策金利を過去最低の0.25%から0.50%に引き上げることを決めた。カンリフ副総裁とラムスデン副総裁が、賃金の伸びは低く現時点で利上げを正当化できないとして利上げに反対し、据え置きを主張した。
利上げは2007年7月以来、10年4か月ぶりとなる。ただし、金利と並ぶ政策の柱のもうひとつ量については、英国債の保有枠を4350億ポンドで据え置いた。
カーニー総裁は、10年ぶりに利上げを決めた理由について、「利上げをしなければ、物価の上昇率を目標とする2%に保つのが難しい。経済が堅調なことから、利上げすべきタイミングだと判断した」と説明した。ただし、イギリス経済にとってEUからの離脱を決めたことによる影響は大きいとして、「今後の利上げのペースは緩やかで限定的にとどまる」と述べた(NHK)。
そして会合後に発表した声明から、「前回声明に盛り込まれていた市場が見込んでいるよりも大幅な利上げが必要となる可能性がある」との文言が削除された。
今後の利上げに関してカーニー総裁は、2020年末までに25ベーシスポイントの追加利上げを2回行うという投資家らの見方と同じと説明した。つまりFRBに比べてかなり慎重な利上げペースになることを示した。
これを受けて2日のロンドン市場ではポンドが下落し、英国債は買い進まれた。英国債に関しては観測で売って、実際の利上げを決定したことで買い戻すような動きにも見えるが、再利上げは予想以上に慎重との見方も英国債の買い戻しやポンド売りを誘ったものと思われる。
今回、いわゆる執行部である総裁と副総裁の票が割れたが、これはイングランド銀行では珍しいことではない。また、金利ではなく量についてはイングランド銀行はあらかじめ保有枠の拡大幅と期間を設けて一定期間に買入を行っていたことで、FRBのように毎月の購入額を決めて購入し続けるというパターンではないため、テーパリングの必要はない。今後、イングランド銀行が国債等の保有枠の削減を行ってくるのかは、はっきりしないが、こちらもかなり慎重に行ってくるであろうと予想される。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年11月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。